うちの子は、自分が何を分かっていないかを、分かっていない。メタ認知を仕組みで育てる話

先日、上の子が「今日はテストだから」と言って、自分から少しだけ勉強を始めました。

おっ、と思いました。言われなくても、テストのために自分で準備をしようとしている。成長したな、と。

でも、その中身をのぞいてみて、少し考え込みました。やっていたのは、教科書を、最初のページから、ただ漫然と眺めることでした。「どこが分からないの?」と聞いてみると、返ってきたのは「分かんない」でした。どこが分からないかが、分からない。

これは、我が家の子どもたちに共通する課題だな、と最近感じています。勉強を「やる」ことはできても、自分が何を分かっていて、何を分かっていないのか、を自分で把握できていない。だから、勉強がどうしても、手当たり次第になってしまう。

あとから知ったのですが、この「自分の理解を、自分で把握する力」のことを、メタ認知と呼ぶそうです。そして、我が家の子どもたちは、正直まだ、これがかなり弱い。今日は、そのメタ認知を、これからどうやって育てていこうとしているか、という話を書きます。うまくいっている自慢話ではなく、「まだできていないので、仕組みで育てにいく」という、我が家の作戦会議のような記事です。

目次

メタ認知とは、もう一人の自分が上から見ること

メタ認知というのは、ざっくり言うと、「自分の頭の中を、もう一人の自分が上から眺める力」です。

勉強しているとき、頭の中には二人の自分がいる、とイメージすると分かりやすいと思います。一人は、実際に問題を解いている自分。もう一人は、その様子を上から見て、「お、ここでつまずいてるな」「これは分かってるな」とチェックしている自分。この、上から見ているほうの自分が、メタ認知です。

勉強ができる子は、この上から見る自分が、よく働いていると言われます。「この問題、なんとなくで解いてるな。あやしいぞ」と自分で気づける。「ここが分からないから、例題に戻ろう」と自分で決められる。誰かに言われなくても、自分で自分を修正していける。

一方で、我が家の子どもたちは、この上から見る自分が、まだあまり育っていません。解いている自分はいるけれど、それを見ている自分がいない。だから、分かったつもりで先に進むし、間違えても「なぜ間違えたか」を考えずに流してしまう。自分を監督する力、いわゆる自己調整力が、まだ弱いんです。

でも、調べていくうちに、少し希望が見えてきました。メタ認知は、生まれ持った才能ではなく、育てられる力だとされているんです。

数字で見る、「振り返り」の力

メタ認知が大事だと言われても、ピンとこないかもしれません。なので、その効果を、数字のイメージで見てみます。あくまで考え方を示すための試算ですが、こういうことが起きると考えられます。

同じ60分の勉強を、二つのやり方でやったとします。一つは、60分ずっと問題を解き続ける。もう一つは、50分解いて、最後の10分で「今日どこが分かって、どこがあやしかったか」を振り返る。

学習法翌日1週間後1ヶ月後
振り返りなし(60分ずっと勉強)30%15%8%
振り返りあり(50分+振り返り10分)50%35%22%

(記憶の定着率のイメージ。数字は考え方を示すための例です)

勉強する時間を10分減らして、振り返りに回したのに、1ヶ月後に残っている量は、むしろ2倍以上になっています。「どれだけ長くやったか」よりも、「やったことを、どう見返したか」のほうが、記憶に残る。これは、以前に書いた、忘れる前提で復習を組む話とも、つながっています。

もう一つ、長い目で見た試算もしてみます。同じ週5時間の家庭学習を1年続けたとして、メタ認知が働いている子と、漫然とやっている子では、身につく量に差が出ると考えられます。仮に、振り返りのある学習が1.5倍の効率だとすると、同じ200時間の勉強でも、1年で5割ぶんの差がつく計算になります。

時間は、まったく同じです。差がつくのは、その時間を「どう使ったか」の質のほう。これが、メタ認知を育てたい、いちばんの理由です。

メタ認知を、三つに分解してみる

「メタ認知を育てよう」と言っても、漠然としすぎていて、何をすればいいか分かりません。なので、もう少し細かく、三つのステップに分解してみます。

ステップ中身子どもの心の声(理想)
① 自分を知る自分は何が得意で、どこでつまずくかを知る「計算は速いけど、文章題が苦手」
② モニタリング今、分かっているか?を自分でチェックする「ここ、なんとなくで解いてるな」
③ コントロール分からないなら、どうするかを自分で決める「もう一回、例題に戻ろう」

我が家の子どもたちは、今、①の入り口くらいにいます。「自分は文章題が苦手っぽい」くらいは、なんとなく分かってきた。でも、②の「今あやしいぞ」と気づくことや、③の「じゃあこうしよう」と自分で軌道修正することは、まだほとんどできていません。

だとしたら、いきなり「自分で全部管理しなさい」と求めるのは無理があります。順番に、一段ずつ、育てていくしかない。これは、以前に書いた、子どもの「ちょうどできること」に足場をかける、という話と同じ考え方です。今できることの、少しだけ上を、手伝いながらやらせる。そうやって、上から見る自分を、少しずつ育てていく。

「勉強の前・最中・後」で、問いかけを仕込む

では、具体的にどうするか。調べてみると、メタ認知を育てるには、「計画→実行→振り返り」というサイクルを、習慣にするのがいいとされています。難しく言うと自己調整学習、というそうですが、要は「勉強の前・最中・後に、決まった問いかけをする」ということです。

我が家がこれから仕込もうとしているのは、こんな問いかけです。

タイミングかける問いかけねらい
勉強の前「今日は何を、どこまで分かるようにする?」ゴールを一つ決めさせる
勉強の最中「今のところ、あやしいのはどこ?」手を止めて自分をチェックさせる
勉強の後「できたのはどこ?穴はどこ?次どうする?」振り返って言葉にさせる

ポイントは、親が答えを教えないことです。「ここが間違ってるよ」と言えば、その場は早い。でも、それを続けると、子どもは自分で気づく力を育てられません。だから、教える代わりに、問いかける。答えは、子どもの中から引き出す。

これは、ぐっとこらえる必要があって、正直、親のほうが難しいです。目の前で間違っていると、つい教えたくなる。でも、そこで一呼吸おいて、「もう一回見て、気になるところない?」と問い返す。この問いかけそのものが、子どもの中に「上から見る自分」を作っていく、と考えています。

「教える言葉」を「問う言葉」に変える

もう少し具体的に、我が家で意識しようとしている言い換えを、並べてみます。

つい言ってしまう言葉(教える)言い換えたい言葉(問う)
「そこ、間違ってるよ」「もう一回見て、気になるところある?」
「答えはこうだよ」「どうやって考えたか、教えて?」
「ちゃんと見直しなさい」「どこを見直すと、ミスが見つかりそう?」
「次はここが出るよ」「次のテスト、どこが出そうだと思う?」
「よくできたね」「今日、自分でうまくいったと思うのはどこ?」

左側は、親が主語です。親が判断して、親が答えを渡している。右側は、子どもが主語です。子どもに考えさせ、子どもに答えさせている。

この違いは小さく見えて、積み重なると大きいはずです。左側ばかりだと、子どもは「親が正解を持っている人」だと思って、自分で考えるのをやめてしまう。右側を続けると、少しずつ、「自分で確かめる」ことが当たり前になっていく。我が家は今、完全に左側の親なので、まずはこの言い換えから始めようとしています。

我が家がこれから試す、メタ認知の仕掛け

問いかけ以外にも、メタ認知を育てる小さな仕掛けを、いくつか試してみようと思っています。これも、family-nudgeのときと同じで、「これから試すこと」として正直に書いておきます。

仕掛けどういうねらいか我が家の状態
テストの後、3色に仕分け(できた/あやしい/できない)自分の理解を色で見える化するこれから
勉強の前に「今日のゴール」を一つ書く計画する習慣をつけるこれから
勉強の後に「ひとこと振り返り」を書く振り返りを言葉にするこれから
間違えた問題だけの「まちがいノート」を作る穴を自分で管理させるこれから
「なんで間違えたと思う?」と原因を聞くミスの理由を考えさせる試し中
答え合わせを、子ども自身にやらせる採点者の視点で自分を見る試し中

どれも、派手なものではありません。でも、共通しているのは、「子ども自身に、自分を見させる」という一点です。親が管理するのではなく、自分で自分を管理する練習を、小さく積ませていく。

正直、すぐには変わらないと思っています。メタ認知は、一般に小学校の中学年くらいから、少しずつ育っていくものだとされていて、焦って詰め込むものでもないようです。だから、半年、一年かけて、家の中に「振り返る仕組み」を、少しずつ埋めていくつもりです。半年くらいたったら、また、何が効いて何が滑ったかを、書こうと思います。

これは、投資でずっとやってきたことだった

ここまで書いて、気づいたことがあります。

自分の判断を、あとから振り返る。何がうまくいって、何が外れたかを、記録する。次に活かす。これは、私が投資でずっとやってきたことと、まったく同じでした。

私は、自分の投資の判断を、何度も振り返ってきました。暴落を待ち続けた失敗も、コロナで買い増した判断も、電卓で計算し直して、記録してきた。その振り返りがあったから、次に同じ場面が来たとき、少しはましな判断ができるようになった。これは、お金の世界での、メタ認知だったんだと思います。

子どもに育てたいメタ認知も、根っこは同じです。自分を上から見て、確かめて、次に活かす。この力は、勉強のためだけのものではありません。仕事でも、お金でも、人生のあらゆる場面で、自分を客観的に見られる人は、強い。

だから、これは、テストの点数のための話ではないと思っています。自分で自分を監督できる力を、家の仕組みの中で、少しずつ育てていく。時間はかかるけれど、一生モノの力になるはずです。うちの子は、まだ自分が何を分かっていないかを、分かっていない。でも、それは才能の問題ではなく、これから育てられる力。そう思って、気長に、仕組みを埋めていきます。


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