NISAで倍になった資産を売ると、いくら枠が戻るのか。勘違いしていたので調べてみた

新NISAの「売っても枠が復活する」という話は、たぶん多くの人が知っていると思います。私も知っているつもりでした。旧NISAは一度使った枠は二度と戻らなかったけれど、新NISAは売れば枠が空いて、また使える。長期の資産形成にとって、これはとても大きな進化です。

でも先日、ふと具体的な数字で考えてみて、自分がこの仕組みを半分しか分かっていなかったことに気づきました。

きっかけは、こんな問いでした。生涯の非課税枠1,800万円をすべて使い切って、それが運用で3,600万円まで増えたとします。ここで100万円分を売ったら、いくら分の枠が復活して、また非課税で投資し直せるのか。

なんとなく「100万円売ったんだから、100万円分また買えるだろう」と思っていました。でも、調べてみたら違いました。今日は、その勘違いを数字で解いていきます。

目次

復活するのは「売った金額」ではなく「買った時の金額」

まず、いちばん大事な結論から。新NISAで売却したときに復活する非課税枠は、売った金額(時価)ではなく、その商品を買った時の金額(取得価額・簿価)分です。

言葉だけだと分かりにくいので、さっきの例で具体的に見ます。

生涯枠1,800万円を使い切って投資したものが、運用で3,600万円まで増えている。つまり全体が倍になっている状態です。ここで、時価100万円分を売るとします。

この100万円分は、元をたどれば「50万円で買ったもの」です。全体が倍になっているのだから、今の100万円は、買った時は半分の50万円だった、ということになります。

そして復活するのは、この「買った時の50万円」のほうなのです。

項目金額
売って手元に戻る現金100万円
復活する非課税枠50万円分
差額(=増えた分)50万円

手元には現金100万円が戻ってきます。増えた50万円分も、もちろん非課税で受け取れます。でも、次に非課税で投資し直せる枠として復活するのは、50万円分だけ。増えた50万円は、非課税で受け取れはするものの、「もう一度非課税の器に入れ直す」ことはできないのです。

「100万円売ったから100万円また買える」ではなかった。ここが、私の勘違いでした。

増えているほど、戻る枠は小さくなる

この仕組みで面白いのは、資産が増えているほど、同じ金額を売っても戻ってくる枠が小さくなることです。時価100万円分を売ったとき、含み益の大きさ別に、復活する枠がどう変わるかを並べてみます。

買った時からの増え方時価100万円を売ると復活する枠
増えていない(1.0倍)100万円分
1.5倍になっている約67万円分
2倍になっている50万円分
3倍になっている約33万円分
5倍になっている20万円分

長く持って大きく育った資産ほど、時価に占める「元手」の割合が小さくなります。だから同じ100万円を売っても、そのうち枠として戻るのは元手部分だけ。5倍に育っていたら、100万円売っても20万円しか戻らない計算です。

これは、長期投資がうまくいった人ほど直面する話です。20年、30年と育てた資産は、時価の大半が「増えた分」になっています。それを売ると、現金はたっぷり戻るけれど、非課税枠はわずかしか復活しない。

なぜ、こんな設計になっているのか

では、なぜ「売った金額」ではなく「買った時の金額」で戻すのでしょうか。ここは制度の条文にはっきり書いてあるわけではないので私の推測も混じりますが、考えてみると筋が通っています。

もし「売った金額」で枠が復活すると、こういうことが起きます。1,800万円で買ったものが3,600万円に増え、それを全部売れば3,600万円の枠が復活する。その3,600万円をまた非課税で投資して、また倍にして売れば7,200万円……と、増えた利益の上にさらに非課税枠が雪だるま式に膨らんでいきます。増えた分にまで非課税枠を与え続けると、生涯1,800万円という上限が、事実上あってないようなものになってしまう。

だから、枠の管理は「買った時の金額(簿価)」で固定する。増えた分(利益)は非課税で受け取れるけれど、その利益に新しい非課税枠までは与えない。これは「増えた分への二重の優遇を防ぐ」という、公平性のための線引きなのだと思います。

含み損のときも同じルールで、こちらは逆に投資家に有利に働きます。150万円で買ったものが100万円に値下がりして売っても、復活するのは買った時の150万円分。損をしていても、投じた元手ぶんの枠はちゃんと戻ってきます。損得にかかわらず「買った時の金額」で管理する、という一貫したルールなのです。

2026年度の改正で、変わるところ・変わらないところ

この枠復活について、2026年度の税制改正で一つ変わる点があります。ただし、変わるのは金額の計算方法ではなく、タイミングです。

これまでは、売却した分の枠が復活するのは「翌年の1月1日」でした。1月に売っても、その枠が使えるようになるのは翌年の頭まで待つ必要があった。これが改正で、「当年中」に復活する方向へ早まることが決まっています(施行時期などの詳細は、今後の発表を確認する必要があります)。

現行2026年度改正後
復活する金額買った時の金額(簿価)分変わらず、買った時の金額分
復活するタイミング売却の翌年1月1日当年中に前倒し

つまり、「戻る金額の計算方法」は今回の改正でも変わりません。あくまで「戻るのが早くなる」だけです。私が勘違いしていた本丸の部分(時価でなく取得額で戻る)は、改正後もそのままなので、そこは押さえておく必要があります。

なお、この復活のタイミングが効いてくるのは、生涯枠1,800万円を使い切ったあとの入れ替えの場面です。枠がまだ余っている人にとっては、当面あまり関係のない話でもあります。

2027年からは「こどもNISA」も加わる

もう一つ、2027年から始まる新しい制度にも触れておきます。0歳から17歳の子ども向けの、いわゆる「こどもNISA」です。

こどもNISAは、つみたて投資枠と同じ対象商品で、年間の投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円とされています。そして大事なのが、子どもが18歳に達すると、こどもNISAの資産は自動的に大人のNISAへ移行する、という点です。

ここで枠の話とつながります。こどもNISAで使った600万円は、18歳になると大人の生涯枠1,800万円の一部として引き継がれます。つまり、こどもNISAで600万円を使い切った子は、18歳以降、大人のNISAでは残りの1,200万円の枠を追加で使っていく形になります。0歳から始めれば、実質的に生まれた瞬間から老後までの超長期で、非課税の運用を回し続けられる設計です。

我が家にも子どもがいるので、これは素直にありがたい制度です。ただし、枠の管理ルール自体は大人のNISAと同じ簿価ベースになると見られています。つまり、こどもNISAで増えた分も、売却時に枠として戻るのは買った時の金額分。ここまで見てきた話が、そのまま子ども名義の口座にも当てはまることになります(制度の細部は2026年中に順次発表される見込みなので、確定情報は都度確認が必要です)。

「増えた分は、非課税では二度と運用し直せない」

ここまで調べてみて、私の中で一つの結論に落ち着きました。

新NISAの非課税枠は、たしかに売れば復活します。でも、復活するのはいつも「自分が入れた元手の分」だけ。増えた分は、非課税で受け取ることはできても、非課税の器に入れ直すことはできない。 一度この器の外に出した利益は、次からは普通の課税口座で運用することになります。

これは、私にとっては「だからこそ、むやみに売らないほうがいい」という話でした。せっかく非課税の器の中で大きく育った資産を、途中で売って外に出してしまうと、その育った部分は二度と非課税では運用できなくなる。生活に必要で取り崩すのは当然いいのですが、「なんとなく利益確定したくなったから売る」というのは、この器のいちばんおいしい部分を自分から手放すことになりかねません。

売れば枠が戻るという安心感は、たしかにあります。でもその安心感は、「元手はいつでも戻せる」というだけで、「増えた分の非課税運用まで戻せる」わけではなかった。この違いを勘違いしていると、出口で損をします。

結局のところ、非課税の器の中で育ったものは、必要になるまで器の中に置いておく。売らずに持ち続けることの価値を、枠の仕組みのほうからも確認できた気がします。いつもと同じ、静かな結論に戻ってきました。

(この記事は2026年7月時点で公表されている情報と税制改正大綱をもとにまとめた個人の理解です。制度の詳細は今後変わる可能性があるので、実際の判断は最新の公式情報をご確認ください。)


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