積み立てているだけなのに、なぜインデックスで複利が効くのか。腑に落ちるまで調べてみた

以前、複利のすごさをドラクエの経験値にたとえた記事を書きました。レベルが上がるほど、一回のバトルでもらえる経験値が増えていく。あれが複利の正体だ、と。

書いたあとで、自分でも引っかかっていたことがあります。「すごい」のは分かった。でも、なぜそうなるのか。ちゃんと説明できるかというと、自信がありませんでした。

特にインデックス投資が、私にはずっと腑に落ちていませんでした。銀行預金に利息がつくのは分かります。でもインデックスは、毎月ただ「その日の価格」でファンドを買っているだけです。利息が振り込まれるわけでもない。積み立てているだけなのに、複利って関係あるのか。今の価格で買って、それが上がるか下がるかだけの話じゃないのか。

「複利は後から効いてくる」という言葉も、よく分かりませんでした。後から効くって、何が? 今はまだ効いていない複利ボーナスみたいなものが、どこかに溜まっているのか?

気になったので、いくつかの解説や実際の運用データを調べながら、自分が納得できるまで計算してみることにしました。同じように「複利、すごいのは分かるけど、なぜ?」でつまずいている人の役に立てば、と思って書き残しておきます。

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まず、単利と複利を並べてみた

100万円を、年7%で増える場所に置いたとします。「年7%」というのは、1年でどれだけ増えるかのルールです。ここは単利でも複利でも同じ。1年後はどちらも107万円になります。

分かれるのは2年目からです。

  • 単利:毎年、最初の100万円にだけ7%がかかる。だから毎年きっかり7万円ずつ増える。
  • 複利:2年目は、107万円に7%がかかる。だから7万4,900円増える。増えた7万円にも、7%がかかるから。

この「増えた分にも、次の年から%がかかる」—たったこれだけが、複利と単利の唯一の違いです。1年でたった4,900円の差。でも、これを何十年も続けると、とんでもないことになります。同じ100万円を、同じ年7%で置いたときの、単利と複利の差を並べてみます。

経過年単利(100万に7%)複利(増えた分にも7%)
10年後170万円197万円27万円
20年後240万円387万円147万円
30年後310万円761万円451万円
40年後380万円1,497万円1,117万円

見てほしいのは、利回りはどちらもずっと年7%のままだということです。それなのに、30年後には310万円と761万円で、2.5倍近い差がつく。40年後には約4倍です。

「年7%」という数字は、複利か単利かとは関係ないのです。7%はあくまで1年あたりの増え方のルール。それを単利で回すか複利で回すかで、結果がまったく変わる。複利の”効果”は、7%という数字にではなく、最終的にいくらになったか—この表でいう761万円のほう—に表れます。

「100万を年7%で回すと107万、それは年利7%であって複利じゃないのでは?」と思ってしまいますが、その通りです。1年だけ見れば複利も単利も同じ7%。複利かどうかは、その7%を”何にかけ続けるか”の話で、それは年数を重ねて初めて差になって出てくる。だから複利は「1年の数字」ではなく「積み重ねた結果」に宿ります。

では、インデックスに利息はどこにあるのか

引っかかっていたのが、そもそもインデックスに「利息」なんてあるのか、という点です。預金には利息がある。でもインデックスは、価格が上がったり下がったりするだけです。

調べてみて納得したのは、インデックスの「利息」にあたるものは、価格そのものの成長率だということでした。

全世界株のインデックスは、世界中の会社の集まりです。会社は利益を出し、その利益をまた設備や人に再投資して、翌年はもっと大きな利益を出そうとします。企業活動そのものが「稼いだ分をまた元手にして、次はもっと稼ぐ」という、複利とそっくりの構造をしている。その積み重ねが、長い目で見た株価指数の右肩上がりになります。

だから、株価が長期で平均して年5%とか7%で成長するというのは、預金がその利率で利息を生むのと、数学的にはほとんど同じことでした。振込のお知らせが来ないだけで、あなたの持っているファンドの「今の価格」の中に、去年の成長分がもう含まれている。その膨らんだ価格に、翌年の成長率がかかる。利息が自動で価格に組み込まれ続けているようなものです。

「今の価格で買っているだけ」というのは正しいのですが、その”今の価格”が、過去の成長を全部飲み込んで膨らんできた価格なのだ、というところが見落とされがちなポイントでした。

オルカンの「年率○%」は、すでに複利で計算されていた

もう一つ気になっていたのが、投信の説明でよく見る「年率○%」という数字です。あれは複利込みなのか、それとも別物なのか。

実際のオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)の数字で確かめてみました。オルカンは2018年10月末に基準価額10,000円でスタートし、2026年7月時点で約38,000円になっています。約7年8か月で、およそ3.8倍です(過去の実績であり、将来を約束するものではありません。この期間はかなりの円安が追い風になった点も割り引いて見る必要があります)。

この3.8倍を「年率」に直すとき、素朴にやると間違えます。増えた分は約280%なので、それを約7.7年で割って「年36%」——これは複利を無視した、誤った計算でした。正しくは、「毎年何%で複利成長したら、7.7年で3.8倍になるか」を逆算します。その答えが、年率約19%です。

投信で目にする「年率○%」という数字は、そもそも複利で割り戻して計算された値なのです。「7%は複利なのか別物なのか」と悩んでいましたが、答えは「年率と書いてある時点で、もう複利込み」でした。年率という表現の中に、複利はすでに溶け込んでいる。だから年率7%と言われたら、それは「毎年7%ずつ複利で膨らんだと考えたときの、ならした速度」のことです。

「10年の年率」と「30年の年率」は、なぜ違うのか

ここで新しい疑問がわきました。複利が効くなら、長く持ったほうが年率も高くなるのでは? という疑問です。

調べて計算して、そして自分の勘違いに気づきました。もし毎年きっかり同じ%で成長する世界なら、10年で見ても30年で見ても、年率はまったく同じでした。毎年きっかり7%成長する世界で確かめてみます。

期間最終的な倍率年率(複利換算)
10年1.97倍7.0%
20年3.87倍7.0%
30年7.61倍7.0%

最終倍率は、10年で1.97倍、30年で7.61倍と、複利でぐんぐん膨らんでいます。それなのに、年率はどの期間で見ても7.0%のまま動きません。

さっきの単利・複利の表と同じ構図です。複利で膨らむのは「倍率」のほうで、「年率」はその膨らみを複利のまま割り戻した数字だから、期間を延ばしても変わらない。効いているのは、その一定の年率に「かける年数」のほうなのです。同じ7%でも、30年かければ7.6倍になる。年率が上がるのではなく、年数が倍率を押し上げている。

では、現実のオルカンやS&P500で「10年の年率と30年の年率が違う」のはなぜか。調べてみると、それは複利のせいではなく、その期間にたまたまどんな相場が含まれたかが違うからでした。

たとえばS&P500を、期間をずらしながら過去数十年分集計した調査では、20年保有の年率は平均で約8%、30年保有だと平均で約10%、といった差が出ています。これは「30年のほうが複利が効くから」ではなく、切り取った30年の中に、たまたま力強い上昇局面が多く含まれていた、というだけの話でした。

面白いのは、期間が長くなるほど、年率の”ブレ幅”が小さくなることです。同じ調査で、20年保有だと年率は最低5%台から最高11%台までばらつくのに、30年保有だと最低9%前後から最高11%前後に収まっていました。短い期間はたまたまの相場に振り回されるけれど、長い期間は良い年も悪い年も均されて、その資産本来の実力に近い年率へ落ち着いていく。長く持つ意味は「年率が上がる」ことではなく、「年率が安定して、複利をかける年数が増える」ことだったのです。

いちばん分からなかった、「複利は後から効く」の正体

さて、ここからが本題です。私がいちばん腑に落ちていなかったのが、この問いでした。

たとえば、20年コツコツ積み立てて、今オルカンで評価額1,000万円になっているAさんがいます。一方、今ちょうど手元の1,000万円を一括でオルカンに投じるBさんがいます。この二人の、これからのリターンは「同じ」です。同じ1,000万円が、同じインデックスで、同じ相場を進んでいくのだから、当然です。

複利が後から効いてくるなら、20年育ててきたAさんのほうが、これから有利なんじゃないのか? Aさんには積み上げてきた複利の”貯金”みたいなものがあって、それがこれから発動するんじゃないのか? という疑問はもっともです。

調べて、計算して、ようやく分かりました。この考え方が、そもそも間違っていたのです。

複利は、未来のどこかで発動する魔法ではありません。Aさんの1,000万円は、すでに複利が効いた”結果”なのです。Aさんが20年前に投じたお金は、仮に約258万円でした。それが年7%相当で20年育って、約1,000万円になった。つまりAさんの複利は、もう使われて、1,000万円という残高に化けている。これから発動する複利の貯金なんて、どこにも溜まっていません。

だから今この瞬間、二人とも1,000万円を持っているなら、そこから先の増え方は完全に同じ。Aさんに隠れたボーナスはない。複利の果実は、もう残高の中に溶け込んでいる。これが、いちばん大事な気づきでした。

じゃあ「後から効く」って、何だったのか

複利が残高にもう化けているなら、「後から効いてくる」という言葉は嘘だったのか。そうではありませんでした。ただ、比べる相手が違っていたのです。

「後から効く」は、AさんとBさんを比べた話ではなく、Aさん一人の20年間の中で起きることでした。Aさんの258万円が、どう育っていったかを追ってみます。

Aさんの258万円残高その10年で増えた額
スタート258万円
前半10年後約500万円約242万円
後半20年後約1,000万円約476万円

同じ10年間、同じ年7%なのに、前半では約242万円しか増えていないのに、後半では約476万円も増えています。ほぼ2倍です。

なぜか。前半は「258万円」に7%がかかっていたのに対し、後半は「約500万円」に7%がかかっているからです。同じ7%でも、かかる相手(残高)が大きくなっているぶん、1年で増える金額が大きくなる。雪だるまが小さいうちは一回転でつく雪も少ないけれど、大きくなると一回転でごっそり雪をまとう。これが「後から効いてくる」の本当の意味でした。

つまり「後から効く」とは、同じ一人の中で、残高が育った後半ほど1年の増加額が大きくなるということ。AさんとBさんの勝負の話ではなかったのです。ここを取り違えていたから、ずっと腑に落ちなかったのだと分かりました。

AさんとBさんの、本当の違い

では、AさんとBさんに違いはないのでしょうか。あります。「今から先」は同じですが、「ここに至るまで」と「投じた元本」がまるで違います。

Aさんは、たった約258万円を投じて、20年かけて1,000万円を作りました。Bさんが同じ1,000万円を今用意するには、現金がまるまる1,000万円必要です。約258万円と1,000万円。同じゴールに立つのに、Aさんが必要とした元手は、Bさんの4分の1で済んでいる。

その差を埋めたのが、時間でした。Aさんは、足りない現金の代わりに、時間に働いてもらった。20年という時間が、258万円を1,000万円に変える仕事をしてくれた。これが「早く始めた人が有利」の、本当の中身です。早く始めた人は、少ない元手で同じ場所にたどり着ける。逆に言えば、始めるのが遅れるほど、同じ場所に立つために必要な現金は増えていきます。

「早く始める」が、最終的にどれだけ効くのか

この「時間が現金の代わりに働く」効果が、最後にどれだけの差になるのか。毎月3万円を年7%で積み立て、65歳まで続けた場合を、開始年齢だけ変えて計算してみました。

開始年齢投じた元本65歳時点の評価額増えた分
30歳(35年)1,260万円約5,403万円約4,143万円
35歳(30年)1,080万円約3,660万円約2,580万円
40歳(25年)900万円約2,430万円約1,530万円
45歳(20年)720万円約1,563万円約843万円

30歳で始めた人と、40歳で始めた人を比べます。追加で積んだ元本の差は、10年分=360万円です。たった360万円、多く積んだだけ。それなのに、65歳時点の評価額は、約5,403万円と約2,430万円で、差は約2,970万円にもなりました。

360万円多く入れただけで、最終的に約3,000万円の差。この差額のほとんどは、自分が入れたお金ではなく、早く入れたおかげで長く働いてくれた時間が生んだものです。これが、複利が「最終的に」どれだけ効くのか、という問いへの答えでした。利回りを上げたわけでも、大金を突っ込んだわけでもない。ただ10年早く始めただけで、これだけ変わる。

念のため、これらは年7%が続いた場合の一定の前提での試算で、諸説あります。現実の相場は上下しますし、この通りにいく保証はありません。それでも、「時間そのものが、後から入れる大金に匹敵する仕事をする」という向きは、どの前提で計算しても変わりませんでした。

調べ終えて、腑に落ちたこと

長々と計算してきて、私なりにようやく腑に落ちたのは、こういうことでした。

複利は、利回りが途中で上がる魔法ではない。1年あたりの増え方(年率)はずっと同じで、複利の効果はぜんぶ「最終的な倍率」の側に出る。その倍率を膨らませるのは、利回りでも入金額でもなく、いちばんは「時間」だった。そして今持っている残高は、複利がこれから効く元手であると同時に、過去の複利がもう化けた結果でもある。

複利のすごさを語る有名な逸話はたくさんあります。アインシュタインが複利を人類最大の発明と呼んだという話(本当に言ったかは諸説あります)や、バフェットの資産の大半が50代以降に増えたという話。どれも「複利はすごい」を伝えてくれますが、なぜすごいのかまでは教えてくれませんでした。自分で数字を追ってみて、その「なぜ」がやっと自分の言葉になった気がします。

そして、この仕組みでいちばん効くレバーが「時間」で、時間だけはあとから積み直せない以上、結論はいつもと同じ地味な場所に戻ります。今日いちばん賢い一手は、少額でもいいから今日始めて、途中でやめないこと。

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