金券は現金より先に使う。それだけで10年後に約2倍の差がつく家計術

引き出しの奥に、使いかけのクオカードが何枚か眠っていました。数えてみたら、思っていたよりずっと多い。図書券も出てきました。子どもが小さいころに、誰かからお祝いでいただいたものだと思います。お米券も、ドラッグストアの優待券も、気づけば少しずつ溜まっている。

多くの人はこれらを、なんとなく「現金と同じ」だと思っていると思います。額面のぶんだけ価値がある、いつでも使える、だから急がなくていい。引き出しにしまってあるだけで、なんとなく安心していたのです。

でも、家計を数字で見るクセがついてから、ふと気づきました。この引き出しの中身は、現金と同じではありません。むしろ現金より「弱いお金」です。そして、寝かせている限り、静かに価値を減らし続けている。

目次

金券には2種類ある

まず、手元の金券を「期限」で分けてみます。我が家の引き出しを開けると、だいたいこの2種類に分かれました。

種類具体例期限使わなかったときの末路
期限つき株主優待券の一部、期限つきポイント、キャンペーンで配られる商品券あり期限が切れたら価値ゼロ
期限なしクオカード、図書カード、お米券、無期限の優待券なし(または実質なし)額面は残るが、実質価値はゆっくり減る

このうち、危ないのが分かりやすいのは上の「期限つき」のほうです。

期限つきは、放っておくとドブに捨てることとなる

期限つきの金券は、使わなければそのまま消えます。3,000円分の優待券を期限切れで捨てたら、それは3,000円をドブに捨てたのとまったく同じです。しかも失うのは額面の一部ではなく、全額。

期限つきについては、話は単純です。とにかく先に使う。理屈うんぬんより、失効ゼロという最悪だけは避ける。これに尽きます。

問題は、次の「期限なし」のほうです。

期限がなくても、寝かせるほど損をする

「クオカードや図書券は期限がないんだから、急がなくてもいいじゃないか」

多くの人はそう思っていると思います。実際、額面は減りません。1万円分のクオカードは、10年後も1万円分のクオカードです。数字の上では、たしかに減っていない。

でも、ここに二つの見落としがあります。

ひとつめは、機会費用です。金券を引き出しに寝かせているあいだ、私たちはその金券で買えたはずの日用品を、わざわざ現金で払っています。つまり金券を使わないことで、本来なら投資に回せたはずの現金を、日々の買い物で消してしまっている。

ふたつめは、インフレです。額面は変わらなくても、モノの値段が上がれば、同じ1万円で買える量は減っていきます。額面据え置きということは、実質的にはゆっくり目減りしているということです。

この二つを、数字で並べてみます。

5万円分の金券を、10年でどう扱うか

我が家の引き出しに眠っていた金券を、ざっくり合計5万円分と仮定します。これを2つのやり方で10年間扱った場合を試算しました(あくまで一定の前提のもとの試算で、諸説あります)。

  • 放置ルート:使わずに引き出しに寝かせ続ける。日々の買い物は現金で払う。
  • 先に使うルート:今すぐ、どうせ買う予定だった日用品を金券で払い、浮いた現金5万円を投資に回す。

前提は、インフレ率を年2%、投資の想定利回りを年5%(税・手数料は簡略化のため考慮せず)としています。

経過年放置(額面)放置(実質の購買力)先に使い、浮いた現金を投資
0年50,000円50,000円50,000円
1年50,000円49,020円52,500円
3年50,000円47,116円57,881円
5年50,000円45,287円63,814円
10年50,000円41,017円81,445円

10年後を見比べると、寝かせた金券の実質的な購買力は約41,000円まで下がり、先に使って投資に回したお金は約81,000円まで増えています。

81,445円 ÷ 41,017円 = およそ1.99倍。

これが「先に使うか、寝かせるかで、価値が約2倍変わる」の正体です。派手なテクニックは何も使っていません。ただ「使う順番」を変えて、浮いた現金を寝かせずに働かせただけです。

小さく見ても同じことが起きています。1,000円のクオカードを10年寝かせると、実質の購買力は約820円まで下がります。一方、先に使って1,000円を投資に回せば、同じ前提で約1,629円。1枚あたりでも、じわじわ差がついていきます。

ただし、ひとつだけ条件がある

ここは正直に書いておきます。この「約2倍」が成立するには、条件があります。

金券で買うのは、どうせ現金で買う予定だったものに限る、ということです。

金券があるからと、必要のないものを買ってしまえば、現金は1円も浮きません。むしろ余計な出費が増えるだけです。「金券を使う」と「無駄遣いをする」は、まったくの別物です。浮いた現金を投資に回すというこの話は、あくまで支出を金券に付け替えて、そのぶんの現金を守るという前提でだけ成り立ちます。

このあたりの「額面より、実質でいくら得したか」で考える感覚は、以前書いた実質コストの記事と地続きです。安いから買うのではなく、寝かせるから損をする。同じ物差しの話だと思っています。

「安いから買う」をやめた話(実質コスト家計術)

まめ家のルールは「財布より先に、金券入れを開く」

理屈が分かっても、人はなかなか動きません。私自身、この計算をする前は、レジで律儀に現金やカードを出して、金券は引き出しに戻していました。使い道がなかったのではありません。使うクセがなかっただけです。

そこで、我が家では仕組みのほうを変えました。買い物に行くとき、財布より先に金券入れを開く。買い物リストの一番上に「まず金券から出す」と書いておく。意志で思い出すのではなく、順番のほうを固定してしまう。これは、意志より仕組みを信じるという、我が家の家計のいつものやり方です。

クオカードはコンビニや一部の書店・ドラッグストアで。図書カードは書店で本を買うときに。お米券はスーパーで。優待券はそのお店で。「使い道がない」のではなく、「使う場面を決めていなかった」だけでした。場面さえ決めてしまえば、引き出しの金券は数か月でだいぶ軽くなりました。

金券は、現金の劣化版です。放っておけば期限という貧乏神に食べられ、期限がなくてもインフレでゆっくりやせ細る。だからこそ、現金より先に、真っ先に使う。物件を貧乏神に取られる前に動くのと、たぶん同じ感覚です。

引き出しの中で眠らせておく理由は、どこにもありませんでした。


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