資産が1億円を超えた。ただし瞬間風速で、思ったより静かな夜だった

先日、資産が1億円を超えました。

こう書くと、なんだかすごいことのように見えるかもしれません。でも、実際にその数字を見たときの私は、拍子抜けするほど、静かでした。ガッツポーズもしなかったし、家族に大声で報告することもなかった。ただ、口座の合計欄をぼんやり眺めて、「ああ、超えたのか」と思っただけでした。

しかも、これは瞬間風速です。相場は毎日動いているので、来週にはまた9,000万円台に戻っているかもしれません。1億円ちょうどというのは、たまたまその日、その瞬間に、線をまたいだ、というだけの話です。

それでも、区切りは区切りなので、今日はこの節目のことを書いておこうと思います。派手なサクセスストーリーではありません。淡々と続けた先に、こういう景色があった、という記録です。

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290万円から始まった

いちばん古い記録をたどると、私の資産は、10年ちょっと前で、290万円くらいでした。

当時のことを思うと、1億円なんて、まったく現実味のない数字でした。宝くじの話くらい遠い。目の前の生活で精一杯で、老後どころか、来年のことを考えるのも億劫だった記憶があります。

そこから今まで、約10年。290万円が、1億円になりました。ざっくり計算すると、34倍くらいです。

ただ、これを「34倍に増やした」と書くのは、正直、嘘くさい。実際には、毎月コツコツ入金してきたお金と、その運用益が、両方積み重なった結果です。何か一発当てたわけでも、天才的な投資判断をしたわけでもありません。むしろ、後で書くように、私はけっこう回り道もしています。それでも、時間をかけて積み上げていけば、こういう数字になる、ということだと思っています。

中身は、この10年でだいぶ変わった

面白いのは、資産の「中身」が、この10年でだいぶ変わったことです。

始めたばかりのころは、資産のほとんどが、預金でした。銀行に置いておくのが当たり前で、投資はまだ、こわごわと少額でやっている程度。お金は、増やすものではなく、減らさないように守るもの、という感覚でした。

でも今は、内訳がすっかり入れ替わっています。ざっくり言うと、こんな感じです。

資産の種類だいたいの割合
投資信託(インデックス中心)半分くらい
預金2割くらい
2割くらい
iDeCo・財形など残り

いちばん大きいのが、投資信託です。全世界株のインデックスファンドを、ひたすら積み立ててきた結果、これが資産の半分を占めるまでになりました。特にここ数か月は相場が good だったこともあって、投資信託だけで、3か月で数百万円ぶん増えていました。もちろん、逆に数百万円減る月もあります。それも含めて、市場に置いておくということなんだと思います。

預金は、生活を守るためのクッションとして、2割ほど。これは、暴落が来ても狼狽売りしないための、心の余白でもあります。この預金があるから、株や投資信託が下がっても、動じずにいられる。守りと攻めの、バランスの錘のような役割です。

実は、けっこう回り道をしている

淡々と積み立ててきた、と書きましたが、最初から今のスタイルだったわけではありません。若いころは、けっこう回り道をしました。

正直に書くと、昔、投機的なことにも手を出しています。短期でお金を動かして、値動きを追いかけて、一喜一憂して。結果は、まあ、うまくいきませんでした。手元に残ったのは、たいした利益ではなく、「自分には相場を読む才能はない」という、身にしみた実感でした。

でも、その回り道は、無駄ではなかったと思っています。あれこれ試して、ことごとくうまくいかなかったからこそ、「自分が相場に勝とうとするのはやめよう」「市場全体に乗って、ただ時間をかけよう」という、今のスタイルにたどり着けた。近道をしようとして、遠回りをして、結局いちばん地味な道が正解だった、というのは、投資に限らず、よくある話なのかもしれません。

もし過去の自分に一つだけ言えるなら、「値動きを追いかける時間を、全部インデックスの積立に回せ」と言うと思います。でも、当時の自分は、たぶん聞かなかったでしょう。自分で回り道をして、痛い目を見て、やっと納得したんです。

1億円は、ゴールではなかった

さて、1億円を超えて、何が変わったか。

結論から言うと、ほとんど何も変わりませんでした。

相変わらず、私は毎月同じ額を自動で積み立てているし、スーパーでは特売を気にするし、子どものおもちゃが吸い込まれないようロボット掃除機の前に片づけさせています。生活は、1億円を超える前の日と、超えた後の日で、1ミリも変わっていません。

これは、意外な発見でした。1億円という数字には、もっと何か、劇的な変化がついてくるものだと、どこかで思っていた。でも、実際には、ただの通り過ぎる点でした。

以前、FIRE(経済的自立と早期リタイア)の落とし穴について書いたことがあります。「働かなくていい状態」をゴールにしてしまうと、いざそこに着いたとき、やることがなくて後悔する、という話です。1億円も、たぶん同じでした。数字そのものは、ゴールではない。数字は、あくまで、やりたいことを実現するための、手段でしかない。

だから、私はこの1億円を、ゴールテープだとは思っていません。むしろ、これでようやく、お金の心配を少し脇に置いて、「これからどう生きるか」を落ち着いて考えられる、そのスタート地点に立てた、という感覚のほうが近い。今、1年ほど立ち止まって、この先の働き方を選び直そうとしているのも、その延長です。

変わらないことを、これからも続ける

1億円を超えて、投資のやり方を変えるつもりは、まったくありません。

これまでどおり、毎月自動で積み立てて、あとは忘れる。暴落が来ても、設定には指一本触れない。相場が最高値をつけても、何もしない。数字が大きくなったからといって、急に攻めたり、守りに入ったりはしない。淡々と続けるだけです。

むしろ、資産が大きくなるほど、この「淡々と」が効いてきます。1億円の資産が1%動けば、100万円です。日によっては、私の月収より大きな額が、上下する。この金額の動きに、いちいち心を動かしていたら、とても平静ではいられません。だからこそ、数字を見すぎない、動かさない、という仕組みが、ますます大事になる。感情を挟まないことが、いちばんの武器です。

10年前の私に、この景色は見えていませんでした。290万円の口座を眺めて、途方に暮れていた。でも、そこから、ただ淡々と続けただけで、ここまで来られた。特別な才能も、幸運も、必要ありませんでした。必要だったのは、早く始めることと、途中でやめないこと。それだけでした。

1億円は、瞬間風速です。来週には、また下の桁に戻っているかもしれません。でも、それでいいんです。私は、この数字を追いかけているわけではないので。大事なのは、仕組みが回り続けていること。そして、その仕組みの上で、家族と穏やかに暮らせていること。数字は、そのついでに、勝手についてきてくれる。

次の目標は、と聞かれると、少し困ります。特にないからです。強いて言えば、同じことを、これからも淡々と続けること。それだけです。時間は積み直せないので、今日も、いつもどおり、積み立てます。


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