妻は、桃鉄をやりません。
子どもたちが私と桃鉄で盛り上がっていても、妻はたいてい、隣で少し離れて見ているだけです。「よく分からない」と言います。ルールが、というより、たぶん、あのゲームの本質が、性に合わないんだと思います。物件を借金して買ったり、運任せのカードで一発逆転を狙ったり。ああいう、運とリスクで大きく振れるものが、妻はあまり好きではありません。
この「桃鉄をやらない」という一点に、実は、妻のお金との付き合い方が、そのまま出ています。今日は、投資に積極的な私と、投資に懐疑的な妻という、価値観のまったく違う夫婦が、どうやって一緒に資産運用をしているか、という話を書きます。
妻は、投資に懐疑的です
はっきり書くと、妻は投資に対して、ずっと懐疑的です。
私が株や投資信託の話をしても、あまり乗ってきません。「危ないことはしないでほしい」というのが、基本的なスタンスです。新しい投資の話を持ちかけても、まず返ってくるのは、「それ、大丈夫なの?」という慎重な問いです。
ここで、一つ、はっきりさせておきたいことがあります。妻は、無知だから懐疑的なのではありません。むしろ、知識はちゃんとある。投資がどういうもので、長期でどういうリターンが期待できるかも、理解しています。そのうえで、「それでも、大きなリスクは取りたくない」と考えている。分かっていないから反対しているのではなく、分かった上で、慎重なんです。
この違いは、大きいと思っています。知らないから怖がっているのではなく、知った上で、自分の性分として、手堅くいきたい。それは、一つの立派な価値観です。
昔は、正直、歯がゆかった
とはいえ、正直に書くと、昔は、この妻の慎重さが、歯がゆく感じられた時期もありました。
私は、数字で物事を考えるのが好きです。だから、「これだけ長期で積み立てれば、統計的にはこうなる」「現金で置いておくほうが、むしろ機会損失だ」と、シミュレーションを見せて、一生懸命に説明していました。これだけ論理的に説明しているのに、なぜ首を縦に振ってくれないんだろう、と。
でも、あるとき気づきました。私は、妻を「説得して、自分と同じ方向を向かせよう」としていた。それは、たぶん間違いだったんです。
桃鉄でたとえると、私たちは違うプレイヤー
分かりやすくするために、桃鉄でたとえてみます。妻はやりませんが、あえて。
もし私が桃鉄をプレイするなら、私は、物件を積極的に買っていくタイプです。多少借金をしてでも、収益物件を増やして、目的地を目指す。カードも、リスクはあるけれど大きく動けるものを、けっこう使います。攻めのプレイヤーです。
一方、もし妻が桃鉄をやるとしたら、たぶん正反対です。借金は絶対にしたくない。手元の現金を、しっかり確保しておきたい。貧乏神に取り憑かれるのだけは、なんとしても避けたい。派手な物件よりも、堅実に、着実に。守りのプレイヤーです。
同じゲームをやっても、二人のプレイスタイルは、まったく違う。そして、どちらが正しい、という話ではありません。攻めには攻めの、守りには守りの、良さがあります。
攻めと守りが、夫婦で揃っている強さ
ここからが、この記事でいちばん書きたいところです。
以前の私は、妻の慎重さを「揃えるべき差」だと思っていました。でも今は、これは「揃えなくていい、むしろ揃っていないことに価値がある差」だと思っています。
我が家の資産は、リスクを取る資産の割合が、かなり高くなっています。ここまで攻めた配分にできたのは、逆説的ですが、家に、守りの妻がいたからです。
私一人だったら、たぶん、もっと危ない橋を渡っていました。調子がいいときに、さらにレバレッジをかけたり、値動きの激しいものに手を出したり。攻めのプレイヤーは、放っておくと、暴走しがちです。でも、我が家には、何か大きく動こうとするたびに、「それ、本当に大丈夫なの?」と聞いてくる妻がいます。この一言が、私の暴走の、ブレーキになってきました。
投資の世界の言葉を借りるなら、妻は、我が家のポートフォリオにとっての「債券」のような存在です。私という値動きの激しい株式の隣に、どっしりと動かない安定資産がある。だから、全体として、そこまで大きくは崩れない。暴落が来ても、家の中に「動じない人」がいるというだけで、私自身も、不思議と落ち着いていられました。攻めるだけの家庭より、攻めと守りが同居している家庭のほうが、たぶん、ずっと強い。
妻を、投資に引き込むのをやめた
この役割分担に気づいてから、私は、妻を投資に引き込もうとするのを、やめました。
夫婦だから、お金の価値観も揃えなければいけない、と思い込んでいました。でも、そんなことはありませんでした。二人が同じように攻めていたら、我が家はきっと、もっと不安定になっていた。二人が同じように守っていたら、資産はここまで増えなかった。攻める人と、守る人。両方いるから、車はまっすぐ走る。アクセルとブレーキが、別々の人にあるほうが、むしろ安全なのかもしれません。
だから今は、妻に「投資をやろう」とは、あまり言いません。その代わり、大きな判断をするときは、必ず妻に相談します。妻が「それはやめておいたら」と言ったら、たいてい、やめておく。妻の慎重さを、うるさい反対意見ではなく、我が家のリスク管理部門として、頼りにするようになりました。
違う二人だから、たぶん強い
夫婦は、共同経営だと思っています。そして、良い経営チームは、同じ性格の人間だけでは、たぶん成り立ちません。
アクセルを踏みたがる人間と、ブレーキに手をかけている人間。新しいことに飛びつく人間と、いったん立ち止まって考える人間。この二人が、同じ方向のゴールを見ながら、違う役割を担っている。我が家のお金は、そうやって回ってきました。
妻は、今日も投資に懐疑的で、桃鉄もやりません。私は、今日も淡々と積み立てています。価値観は、たぶん一生、完全には揃いません。でも、それでいいと思っています。揃っていないからこそ、我が家のバランスは取れている。
もし、あなたの家に、投資に乗ってくれないパートナーがいるとしても、それは、説得すべき問題ではないのかもしれません。その慎重さは、あなたの暴走を止める、大事なブレーキかもしれない。違う二人だから、強い。我が家は、そう考えるようになりました。
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