楽天とSBI、結局どっちが得か。その問いを追いかけるのを、やめることにした

クレカ積立はどこが一番得か。ふるさと納税は今どのサイトがいいか。ポイントの還元率がまた改悪されたから、別のルートを探さないと。

こういうことを調べるのが、私はわりと好きです。趣味と言ってもいい。新しい還元ルートを見つけたときの「これだ」という感覚は、ちょっとした宝探しに似ています。だから、楽天とSBIとマネックスを比べたり、ふるさと納税のサイトを毎年見比べたり、改悪のニュースが出るたびに代替案を調べ直したり、ということを、何年も続けてきました。

でも最近、ふと自分の手元を見て、思ったんです。

証券口座が、いつのまにか三つになっている。クレジットカードが、財布に何枚も入っている。ポイントが、楽天とdポイントとWAONとVポイントに散らばっていて、それぞれに有効期限がある。ログインIDとパスワードの管理表が、年々長くなっている。

最適解を一つひとつ集めてきた結果、家計が、すごく散らかっていました。

今日は、その最適解を追いかけるのを、ある程度やめることにした、という話を書きます。やめてみたら、思っていたよりずっとラクになりました。

目次

まず、差額がどれくらいか正直に計算してみた

「最適解を追うのをやめる」と言うと、なんだか損をしているように聞こえます。だから、まず、その最適解を追うことで得られる差額が、実際にいくらなのかを、正直に計算してみました。

クレカ積立から。新NISAのつみたて投資枠は月10万円です。仮にこれをフルで積み立てるとして、還元率が0.5%違うカードに乗り換えたとします。すると、差は次のとおりです。

  • 月10万円・還元率0.5%の差 → 年6,000円
  • 月10万円・還元率1.0%の差 → 年1万2,000円

もちろん、ゼロではありません。年6,000円は、ないよりはあったほうがいい。でも、この6,000円のために、新しいカードを作り、新しい証券口座を開き、引き落とし設定をやり直し、古いカードの解約を考える。その手間を一度でも経験すると、「この6,000円、わりに合っているのかな」と思い始めます。

ふるさと納税のサイト選びはもっと小さい差です。ポイント規制が厳しくなってから、各サイトの還元はかなり下がりました。仮に寄付6万円ぶんで、還元率3%のサイトと1%のサイトを比べても、差は1,200円です。サイトを見比べる時間を考えると、これも微妙なラインです。

つまり、最適解と「そこそこの解」の差は、家計全体で見ると、年に数千円から、せいぜい一万円台。これが正直なところでした。

追いかけることの、本当のコスト

差額が小さいのは分かった。では、追いかけることのコストはどうか。これを計算したら、話がひっくり返りました。

還元率の改悪を追って、代替案を調べ直す。新しいサービスの条件を読み込む。比較記事を何本も読む。こういう情報収集に、私はたぶん、年に10時間から20時間は使っています。これを時給2,000円で換算すると、こうなります。

  • 年10時間 → 2万円ぶんの時間
  • 年20時間 → 4万円ぶんの時間

最適解で得られる差額が年6,000円。それを追いかけるために使っている時間が、2万円から4万円ぶん。これだけ見ても、もう逆ザヤです。趣味として楽しんでいるぶんには時間は惜しくない、と言いたいところですが、問題は時間だけではありませんでした。

いちばん効いてくるのは、「持ち物が増える」というコストです。

最適解を追うたびに、口座が一つ増える。カードが一枚増える。ポイント経済圏が一つ増える。ログインIDが一つ増える。一つひとつは小さいのですが、これが積み重なると、家計そのものが複雑になっていきます。どのカードがどの引き落としに紐づいているか、どのポイントがいつ失効するか、把握するだけでひと仕事です。

桃鉄でいうと、便利なカードを集めすぎて、手札がパンパンになって、どれをどこで使えばいいか分からなくなっている状態に近い。カードはたくさん持っているのに、いざというとき最適な一枚を切れない。

そして、もう一つ。これに気づいたとき、追いかけるのをやめる決心がつきました。

自分が倒れたとき、妻はこれを把握できるか

増えすぎた口座とカードを眺めていて、ふと思ったんです。

もし私が突然倒れたら、妻はこの全部を把握できるだろうか、と。

三つの証券口座。何枚ものクレジットカード。あちこちに散らばったポイント。複雑に組まれた引き落とし設定。これらは、私が「最適化」のつもりで一つひとつ積み上げてきたものです。でも、その全体像を完全に把握しているのは、たぶん私だけです。

最適解を追い求めた結果が、「自分にしか分からない家計」だとしたら、それは家族にとっての最適解とは、ずいぶん遠いものになっていました。

以前、妻あての引き継ぎ書を書いたことがあります。自分が先に逝っても家族がお金で困らないように、資産の在りかと「まず何も売るな」という指示をまとめたものです。あのとき痛感したのは、引き継ぎ書をシンプルに書けるかどうかは、ふだんの家計がシンプルかどうかで決まる、ということでした。口座が三つあれば、三つぶん説明しなければならない。カードが五枚あれば、五枚ぶん解約の段取りを残さなければならない。

最適解を追うことは、終活の手間を増やすことでもありました。引退して、いつか店じまいをするときのことまで含めて考えると、家計はむしろ、減らしていったほうがいい。この視点は、若くて元気なうちは、なかなか出てこないものだと思います。

やめてみて、何を残したか

そこで、家計の最適化作業を、二つに分けて考えることにしました。「一回決めたら放置できるもの」と、「年に一回だけ手を入れるもの」です。

まず、一回決めたら放置するもの。これは、頻繁に見直しても差が小さいものです。

  • クレカ積立は、楽天をNISAのメインにして、夫婦それぞれで設定。SBIも夫婦で、マネックスは私が、という形に一度決めて、あとは触っていません。「どこが一番得か」の答えは年々変わりますが、もう追いかけません。そこそこ良い設定を組んで放置するほうが、トータルでは勝つと考えています。
  • 銀行間の振込も、定額自動入金を一度設定して、あとは自動。毎月手で動かすのはやめました。
  • 保険は、そもそも必要なものだけにして、見直す対象を持たない。

次に、年に一回だけ手を入れるもの。これは、ちゃんと差が出るので、放置はしないけれど、毎月気にする必要もないものです。

  • 光回線は、2年に一度キャッシュバックを取って乗り換える、と決めています。ただし、これを記憶でやろうとすると必ず忘れるので、契約と同時にスマホのリマインダーを2年後にセットしておきます。仕組みに思い出させる。
  • 楽天のお買い物マラソンは、買う店をだいたい固定して、買い回りの組み方も毎回考え直さない。
  • ウエル活は、3か月に一度、買うものを決めて定期的に。
  • ふるさと納税も、やる年は時期を決めて一気に。今年は私に収入がないのでそもそもやりませんが、やるなら「いつやるか」だけ先に決めておきます。

こうして並べてみると、我が家の家計を回しているのは、もはや「最適解の知識」ではなく、「忘れないための仕組み」のほうでした。スマホのリマインダー、夫婦で共有しているカレンダー、そしてアレクサ。記憶しておかないといけない単純作業は、片っ端からこれらに預けています。頭で覚えておくのをやめると、頭がずいぶん静かになりました。

最適解より「把握できること」を上に置く

追いかけるのをやめて、いちばん変わったのは、判断の基準です。

以前の私は、「どれが一番得か」で決めていました。今は、「自分と妻が、把握し続けられるか」で決めるようになりました。

年に数千円得をするけれど、管理する口座やカードが一つ増えるなら、やらない。逆に、多少の手間でも、家計がシンプルになる方向なら、やる。最適解を一つ捨てるごとに、家計は少しずつ見通しがよくなって、心が軽くなっていきました。

念のため書いておくと、最適解を追うこと自体を否定したいわけではありません。あれは楽しい趣味です。新しい還元ルートを見つけたときの高揚感は、これからも時々味わうと思います。ただ、それは趣味の引き出しに入れておいて、家計の幹は、一回決めて放置できる単純さで組む。趣味と幹を、分けることにしたんです。

投資を「毎月自動で積み立てて、あとは忘れる」形にしたとき、私はすごくラクになりました。家計のほかの部分も、結局これと同じでした。最適解を毎日追いかける必要なんてなくて、そこそこ良い仕組みを一回作って、あとは忘れていい。

家計の最適化は、毎年やり直すものではなく、一回作って、ときどき思い出す仕組みに任せるもの。そう考えるようになってから、お金のことを考える時間が減って、お金のことで悩む時間も減りました。減ったぶんで、家族とゲームをしている時間のほうが、たぶん人生の最適解に近い気がしています。


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