我が家では、宿題の前に、子どもがグミを一粒食べることにしています。
きっかけは、ささいなことでした。「集中しなさい」と言っても、子どもの集中力がまったく上がらないことに、あるとき気づいたんです。むしろ、言えば言うほど空気が悪くなって、逆効果ですらある。考えてみれば当たり前で、「集中しろ」と言われて集中できるなら、大人だって苦労しません。
集中力は、気合や根性の問題ではなく、体の状態や、まわりの環境の問題なんじゃないか。そう思い始めてから、我が家は「集中しなさい」と言うのをやめて、代わりに「集中しやすい状態を、こっそり用意する」ことを試すようになりました。
その第一歩が、グミでした。今日は、実際に効いている小ワザと、これから試したいと思っている集中スイッチを、まとめて書きます。集中力に悩んでいる家庭の、選択肢の一覧になればと思っています。
なぜ、グミなのか
脳が働くための主なエネルギーは、ブドウ糖です。これは、けっこう有名な話だと思います。頭をたくさん使うと甘いものが欲しくなるのは、脳がエネルギーを消費しているサインだとも言われます。
我が家が勉強前にグミを取り入れたのは、この「脳のガソリン」を、勉強の直前に少しだけ補給しておこう、という発想からでした。ラムネやグミには、ブドウ糖が含まれているものが多い。朝の勉強の前や、宿題に取りかかる前に、一粒か二粒。たったそれだけです。
効果のほどは、正直、科学的にきっちり測ったわけではありません。でも、体感としては、悪くないと思っています。少なくとも、「これを食べたら勉強を始める」という小さな合図になっていて、ぐずぐずせずに机に向かうきっかけにはなっている。味方が一人増えたような感覚です。
一つだけ補足しておくと、これはあくまで「少しだけ」が大事です。糖分なので、たくさん食べれば虫歯にもなるし、血糖値が急に上がって、かえって眠くなることもあると言われます。我が家でも、あくまで一粒か二粒の「スイッチ」として使っていて、おやつ代わりにぼりぼり食べさせているわけではありません。
アレクサが、勉強の「合図」になっている
もう一つ、我が家で効いていると感じているのが、アレクサの使い方です。
朝、勉強を始めるとき、決まった時間にアレクサが「グミを食べて勉強しよう」としゃべります。そこから子どもたちは勉強を開始します。
そして、アレクサにタイマーをセットします。我が家はだいたい、短めの時間で区切るようにしています。「アレクサ、20分タイマー」と言うと、子どもはその20分のあいだ、机に向かう。時間が来ると、アレクサが鳴って教えてくれる。
これの何がいいかというと、「終わりが見えている」ことです。漠然と「勉強しなさい」と言われると、いつまで続くか分からなくて、気が重くなります。でも「20分だけ」と区切られていると、ゴールが見えているので、踏ん張りがきく。大人がジムで「あと5分」と思って走るのと、同じ理屈だと思います。
さらに、毎回同じやり方で始めることで、「アレクサが鳴る音とともに集中モードに入る」という、ちょっとした条件づけのようなものが生まれてきます。同じ合図を繰り返していると、その合図そのものが、スイッチになる。これは、犬がベルの音でよだれを出す、あの有名な実験と、たぶん同じ仕組みです。
グミとアレクサ。この二つは、今のところ我が家の集中スイッチとして、まずまず機能しています。
集中は「気合」ではなく「仕組み」で作る
ここまで書いてきて、共通しているのは、どれも「本人の意志に頼っていない」ということです。
私はもともと、お金のことでも家のことでも、「意志ではなく仕組みで動かす」という考え方をずっと大事にしてきました。投資は毎月自動で積み立てて、あとは忘れる。家事はできるだけ自動化する。意志は有限なので、なるべく頼らない。
子どもの集中力も、まったく同じだと思うようになりました。「集中しろ」と意志に訴えるのではなく、集中せざるを得ない状態、集中しやすい状態を、環境のほうに作っておく。そうすれば、本人ががんばらなくても、自然と集中に入っていける。
グミは体の準備、アレクサは合図と時間の区切り。どちらも、子どもの気合とは関係のないところで、集中を助けています。この発想で、ほかにも試せることはたくさんあるはずだと思って、いろいろ調べてみました。次の章は、その一覧です。
これから試したい、集中スイッチのカタログ
世の中には、集中力に関する小ワザが、たくさんあります。科学的な裏づけがあると言われているものから、ちょっとしたおまじないのようなものまで。我が家でこれから試してみたいと思っているものを、一覧にしてみました。すでに試しているものと、これから試すものを、正直に分けて書いておきます。
| 小ワザ | どういう仕組みか | 我が家の状態 |
|---|---|---|
| 勉強前にグミ・ラムネ一粒 | 脳のエネルギー(ブドウ糖)を補給。開始の合図にもなる | 試し中・効果あり |
| アレクサで時間を区切る | 終わりが見えると踏ん張れる。音が集中の合図になる | 試し中・効果あり |
| ポモドーロ(短く区切って休む) | 25分集中+5分休憩など。短距離走を繰り返す | これから |
| 机の上に物を置かない | 視界に入る情報を減らすと注意が散らない | これから |
| スマホ・ゲームを別の部屋に | 「ある」だけで注意が吸われる。物理的に遠ざける | 一部実施 |
| かわいい動物の写真を1分見る | 集中力が上がるという研究があるとされる | これから(面白そう) |
| 勉強の前に軽く体を動かす | 血流が上がり、頭が働きやすくなると言われる | これから |
| 立って勉強してみる | 眠気が出にくく、短時間の集中に向くとされる | これから |
| 冷たいタオルで顔や首を拭く | 覚醒を促す。眠い夕方などに | これから |
| 環境音・歌詞のないBGMを流す | 無音より集中できる人がいる。歌詞は邪魔になりやすい | これから(アレクサで) |
| 香り(ペパーミント・柑橘)を使う | すっきりした香りで気分を切り替える | これから |
| こまめに水を飲む | 軽い脱水でも集中力は落ちると言われる | これから |
| 「あと1問だけ」ルール | 終わりを小さく区切ると、もう一歩進める | 試し中 |
| 集中しやすい時間帯を見つける | 朝が向く子、夕方が向く子がいる。観察して合わせる | 観察中 |
※どれも個人差が大きく、「全員に効く魔法」はありません。合うものを一つ二つ見つける、くらいの気持ちで試すのがよさそうです。
この表を作ってみて思ったのは、「集中力を上げる」というより、「集中をじゃまするものを減らす」「集中に入るきっかけを作る」アプローチのほうが、現実的だということです。気合で集中力そのものを引き上げるのは難しい。でも、散らかった机を片づける、終わりを区切る、合図を決める、といった小さな工夫の積み重ねなら、すぐにできます。
スマートホームで、集中スイッチを自動にする
我が家はスマートホームをいろいろ使っているので、せっかくなら、集中スイッチも自動化できないかと考えています。これも、これから試したい構想として書いておきます。
たとえば、こんなことができるはずです。
アレクサに「勉強モード」という合図を一つ作っておいて、それを呼ぶと、複数のことが一気に起きるようにする。タイマーが始まり、勉強用の落ち着いたBGM(歌詞なし)が流れ、部屋の照明が少し明るめの白い光に切り替わる。終わったら「休憩だよ」とアナウンスが流れる。これを、毎回ひとつの合図でまとめて起こせれば、「勉強を始める儀式」が、ボタン一つになります。
照明については、スマート電球を使えば、勉強のときは集中しやすい明るい白色、リラックスのときは暖かいオレンジ色、と切り替えられます。光の色は、気分や眠気にけっこう影響すると言われているので、これは効きそうな気がしています。
ほかにも、勉強の時間帯だけテレビの電源が入らないようにする、といったことも、スマートプラグを使えば理屈の上では可能です。誘惑を、意志で我慢させるのではなく、そもそも物理的に起動しないようにしてしまう。意志に頼らない、という考え方の、わりと極端な例です。
このあたりは、やりたいことと、やれるだけの道具は揃っているので、あとは実際に組んで、子どもに合うかどうかを試すだけ。うまくいったら、また結果を書こうと思います。
やらないと決めていること
集中スイッチをいろいろ試す一方で、「これはやらない」と決めていることも、いくつかあります。
一つは、長時間ぶっ通しで集中させようとすること。子どもの集中は、もともと長くは続きません。むしろ、短く区切って、こまめに休んだほうが、トータルでは頭に残ります。これは以前、分散学習の話で書いたとおりです。だから我が家は、長く座らせることより、短く区切ることを優先しています。
もう一つは、ごほうびで釣りすぎること。「集中したらお菓子」「終わったらゲーム」を強くやりすぎると、ごほうびがないと動かなくなって、かえってやる気をしぼませることがあると言われています。グミは「ごほうび」ではなく「準備運動」のつもりで使っていて、できたことへの対価としては渡していません。このあたりの線引きは、けっこう気をつけています。
そして、いちばんやらないと決めているのが、「集中しなさい」と言うこと。あれは、言う側の不安を子どもにぶつけているだけで、集中の役にはほとんど立たない。言いたくなったら、代わりに、机の上を片づけるとか、タイマーをセットするとか、何か環境のほうに手を打つ。そう決めてから、家の空気が、少しだけ穏やかになりました。
親がやるのは、黙って環境を整えること
集中力は、才能でも、気合でもないと思っています。整えれば、誰でも少しは上がるし、散らかっていれば、誰でも下がる。
だとしたら、親の仕事は、「集中しなさい」と声をかけることではなく、子どもが集中しやすい状態を、黙って用意しておくことなのかもしれません。グミを一粒、机の上に置いておく。タイマーをセットしておく。余計なものを片づけておく。それだけで、子どもは、自分の力で集中に入っていける。
我が家の集中スイッチは、まだグミとアレクサくらいしかありません。でも、これから一つずつ、上の表のものを試していくつもりです。合うものもあれば、滑るものもあるでしょう。半年くらいたったら、何が効いて何がダメだったか、また答え合わせを書きたいと思います。
集中は、気合で引き上げるものではなく、仕組みで入りやすくするもの。投資や家事でずっとやってきたことを、子どもの勉強にも広げてみている、というだけの話なのかもしれません。
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