子どもがポケモンの名前を覚えるスピードは、正直なところ異常です。
我が家の上の子も中の子も、何百匹といるポケモンの名前を、ほとんど間違えずに言えます。進化前と進化後、色違い、タイプ、覚える技まで、すらすら出てくる。それだけの情報量を、誰に強制されるでもなく、楽しみながら頭に入れている。
その同じ子が、英単語のことになると「覚えられない」と言うわけです。
最初は、不思議でした。これだけの記憶力があるのに、なぜ英語は入らないんだろう、と。でも、あるとき上の子が、ぽろっとこう言いました。
「ファイヤーって、英語のfireだよね」
そのとき、はっとしました。言われてみれば、ポケモンの名前の多くは、英語の単語をもじって作られています。ファイヤー、サンダー、フリーザー。あの伝説の三鳥は、そのまま fire、thunder、freeze です。子どもたちは、英単語を覚えられないのではなく、もうとっくに覚えていた。ただ、それが英語だと気づいていなかっただけでした。
それから、我が家で「ポケモン英単語リスト」を作り始めました。今日はその話と、実際に作ったリストを公開します。
覚える必要がなかった。もう音は入っていたから
英単語を覚えるのが大変なのは、たいてい「音」と「意味」と「文字」を、いっぺんに頭に入れようとするからだと思います。fireという知らない単語を、ファイアーという知らない音で、火という意味とセットで、しかもF-I-R-Eという綴りまで。一度に四つも新しいものが来たら、そりゃ大変です。
でも、ポケモンが好きな子の頭の中では、もう「ファイヤー」という音は完璧に入っています。何百回と口にしてきた、慣れ親しんだ音です。だから、やることは一つだけ。その音に「これ、英語のfireっていう単語で、火っていう意味なんだよ」と、ラベルを貼ってあげるだけ。
記憶の土台が、すでにできあがっているんです。新しく建てるのではなく、建っている家に表札をかけるようなもの。だから、すっと入る。
これは、上の子が学校やスタサプで英単語に出会ったときに、はっきり効果が出ました。「fire」という単語を見て、「あ、ファイヤーだ」とつながる。意味を聞かれる前に、もう知っている。覚えるための努力ではなく、思い出すだけの作業になる。この「あ、知ってる」の積み重ねが、英語への苦手意識を、ずいぶん軽くしてくれたように思います。
我が家の「ポケモン英単語リスト」
ここからが本題です。我が家で作って、子どもたちと眺めているリストを公開します。
図鑑の番号順だと使いにくいので、英語の意味でテーマ別に並べ直しました。「これ全部覚えなさい」というものではありません。子どもとポケモンの話をしているときに、「これ英語でこういう意味なんだよ」と、会話のついでに混ぜるための、ネタ帳のようなものです。
自然・天気のことば
火や雷など、わかりやすくてかっこいい単語が多い入り口におすすめのグループです。
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| ファイヤー | fire | 火・炎 |
| サンダース | thunder | かみなり |
| フリーザー | freeze | こおる |
| グレイシア | glacier | 氷河 |
| ソルロック | solar | 太陽の |
| トルネロス | tornado | 竜巻 |
| ランドロス | land | 土地 |
| フォレトス | forest | 森 |
| モスノウ | snow | 雪 |
| エアームド | air | 空気・空 |
動物のことば
知っている動物と結びつくので、いちばん盛り上がるグループです。
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| ピジョン | pigeon | ハト |
| ズバット | bat | コウモリ |
| マンキー | monkey | サル |
| クラブ | crab | カニ |
| スワンナ | swan | 白鳥 |
| ホエルオー | whale | クジラ |
| ドンメル | camel | ラクダ |
| ハブネーク | snake | ヘビ |
| ゼブライカ | zebra | シマウマ |
| レパルダス | leopard | ヒョウ |
| フォクスライ | fox | キツネ |
| ツンベアー | bear | クマ |
| ビッパ | beaver | ビーバー |
| ゴーゴート | goat | ヤギ |
| コダック | duck | アヒル |
| ポニータ | pony | 子馬 |
| ラッタ | rat | ネズミ |
虫のことば
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| キャタピー | caterpillar | イモムシ |
| メラルバ | larva | 幼虫 |
| アイアント | ant | アリ |
| スコルピ | scorpion | サソリ |
| バタフリー | butterfly | チョウ |
| レディバ | ladybug | テントウムシ |
| モスノウ | moth | 蛾 |
体のパーツのことば
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| サイホーン | horn | つの |
| ニドキング | needle | 針 |
| テールナー | tail | しっぽ |
| ノズパス | nose | 鼻 |
| エルレイド | elbow | ひじ |
| ラビフット | foot | 足 |
| エイパム | palm | 手のひら |
動き・状態をあらわすことば
少しレベルが上がって、動詞が出てくるグループです。
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| ガバイト | bite | かむ |
| フワライド | ride | 乗る |
| ミミロル | roll | 巻く |
| メルタン | melt | とける |
| エースバーン | burn | 燃える |
| デリバード | deliver | 配達する |
| ディグダ | dig | 穴をほる |
| ハンテール | hunt | 狩る |
| ストライク | strike | 打つ |
| ブースター | boost | 力を高める |
| フローゼル | float | 浮く |
| スリープ | sleep | 眠る |
性質・かっこいい形容詞
英語に少し慣れてきた子が「へえ」と言うのが、このグループです。
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| ギャラドス | gallant | 勇敢な・堂々とした |
| アブソル | absolute | 絶対的な |
| アギルダー | agile | すばやい |
| ビビヨン | vivid | 鮮やかな |
| マッシブーン | massive | どっしりした |
| ラウドボーン | loud | 大声の |
| ラッキー | lucky | 運がいい |
| ダーテング | dirty | 汚い・卑劣な |
| ヤングース | young | 若い |
| ネイティ | native | もともと住んでいる |
もの・道具のことば
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| ギアル | gear | 歯車 |
| コイル | coil | ぐるぐる巻き |
| シェルダー | shell | 貝がら |
| ホイーガ | wheel | 車輪 |
| アーマーガア | armor | よろい |
| スピアー | spear | やり |
| バリヤード | barrier | かべ |
| ダンバル | dumbbell | 重り |
| ネンドール | doll | 人形 |
| メェークル | vehicle | 乗り物 |
植物のことば
| ポケモン | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| リリーラ | lily | ユリ |
| ロズレイド | rose | バラ |
| チェリンボ | cherry | サクランボ |
| リーフィア | leaf | 葉っぱ |
| アップリュー | apple | リンゴ |
| パンプジン | pumpkin | カボチャ |
| マシェード | mushroom | キノコ |
| ナットレイ | nut | 木の実 |
| テッシード | seed | 種 |
二つの単語を合体させた、上級者向け
ポケモンの名前は、二つの英単語をくっつけて作られているものもあります。これが分かるようになると、子どもはかなり得意げになります。
| ポケモン | 英単語の組み合わせ | 意味 |
|---|---|---|
| ニドクイン | needle + queen | 針+女王 |
| ウォーグル | warrior + eagle | 戦士+ワシ |
| アイアント | iron + ant | 鉄+アリ |
| ファイアロー | fire + arrow | 火+矢 |
| インテレオン | intelligence + chameleon | 賢さ+カメレオン |
| シルヴァディ | silver + buddy | 銀+相棒 |
| パルスワン | impulse + ワン | 電流+犬の声 |
| サニゴーン | サニーゴ + gone | サンゴ+いなくなった |
全部は覚えさせない。会話に混ぜるだけ
リストを公開しておいてなんですが、我が家ではこれを「単語帳」としては使っていません。
子どもに「今日はこの10個を覚えよう」とやらせた瞬間に、たぶん英語の宿題と同じものになって、楽しさが消えます。せっかく「好きなもの」だったのに、それを勉強に変えてしまうのは、もったいない。
だから、使い方はゆるいです。一緒にゲームをしているときや、図鑑を眺めているときに、「そういえばギャラドスのギャラって、英語で勇敢なって意味なんだよ」と、ひとこと挟むだけ。中の子はまだ英語をちゃんと読めませんが、音はもう完璧に入っているので、「ファイヤーは英語で火なんだ」というのは、すっと受け取ります。上の子は、自分でリストを見て「これ知ってる、これも知ってる」と確認するのが楽しいようです。
おもしろいのは、子どものほうから「これも英語じゃない?」と言ってくるようになったことです。新しいポケモンの名前を見て、「この部分、何かの英語かな」と考える。これはもう、語源を推測するという、なかなか高度な遊びです。覚えさせようとしていないのに、勝手に学びにいっている。これが、好きなものの強さなんだと思います。
正直に書いておく、いくつかのこと
良いことばかり書いてきましたが、正直なところも残しておきます。
まず、これだけで英語ができるようにはなりません。あくまで「英語って身近だな」と思わせる入り口です。スペル(綴り)までは、この方法では覚えません。音と意味の橋渡しまでが守備範囲で、その先はやはり、ちゃんとした学習が必要です。我が家でも、英語の柱はスタサプで、これはあくまで横にある楽しいおまけ、という位置づけです。
それから、ポケモンの名前は全部が英語というわけではありません。フランス語が由来のものもあります。たとえばビビヨンの「ヨン」は、フランス語で蝶を意味するパピヨンから来ているそうです。フレベベの「ベベ」も、フランス語で赤ちゃんのこと。こういう「実は英語じゃない」も、子どもにとっては面白い発見で、「世界にはいろんな言葉があるんだ」という話につながったりします。
完璧な教材ではありません。でも、子どもが自分から食いついてくる教材を、お金をかけずに作れる、というのは、なかなか悪くないと思っています。
好きなものの中に、学びは隠れている
このリストを作りながら、あらためて思ったことがあります。
子どもが夢中になっているものの中には、たいてい、学びが隠れています。ポケモンには英語が、桃鉄には地理とお金が、マインクラフトには空間認識と段取りが。子どもは、それを学びだと思わずに、ただ好きで触れている。
親がやるべきことは、たぶん、新しい勉強を持ち込むことではなくて、すでに子どもが好きなものの中に隠れている学びを、「見えるようにする」ことなのかもしれません。「これ英語だよ」と表札をかけてあげる。それだけで、好きなものが、そのまま学びになる。
教えるのではなく、一緒に見つける。我が家のポケモン英単語リストは、そういう「一緒に見つけた」ものの記録です。よかったら、お子さんと一緒に、続きを探してみてください。きっと、まだまだ見つかります。
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