空き巣に入られたあと、我が家が変えたこと。防犯は「一つ」ではなく「層」だった

ある年末、家に帰ってきたら、窓が割れていました。

「あっ」と思いました。声に出たかどうかは覚えていません。ただ、頭より先に体が冷たくなったのは覚えています。割れたガラスを見た瞬間、それまで「うちには関係ない」と思っていた出来事が、急に自分の家の話になりました。

この空き巣被害については、以前にも一度書きました。三人組に入られて、カメラにスプレーをかけられて、台所の窓を割られて、それでも盗まれた物はほとんどなかった、という話です。家に資産を置いていない時代だから、それ自体が防犯になっていた、と。

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それは今でも本心です。でも、あの記事を書いたあと、ずっと引っかかっていることがありました。

「盗む物がなかった」というのは、あくまで結果です。入られた、という事実は消えません。そして、もう一度入られない保証は、どこにもありませんでした。

だから我が家は、あの年末から、少しずつ防犯を変えていきました。今日はその実践のほうの話です。何を足して、何に一番安心して、何にいまだに完成していないと感じているか。きれいにまとまった成功譚ではなく、まだ途中の記録として書きます。

目次

妻が、夜の音に敏感になった

実践の話に入る前に、一つだけ書いておきたいことがあります。

被害のあと、いちばん変わったのは、家のセキュリティではなく、妻の心でした。

しばらくのあいだ、妻は夜の物音に敏感になりました。普段は気にも留めない、家がきしむ音や、外を通る車の音に、ふと体をこわばらせる。「気持ち悪い」と、何度か言っていました。盗まれた物がなかったとしても、知らない人間が土足で自分たちの生活の場所に入ってきた、という感覚は、簡単には消えませんでした。

子どもたちには、このことは伝えていません。まだ伝える必要はないと判断しました。家が安全な場所だという感覚を、わざわざ壊したくなかったからです。

防犯設備の話をこれからしますが、私が本当に取り戻したかったのは、機能ではなく、この「家が安心できる場所だ」という感覚のほうでした。これは最初に書いておきます。

防犯は「一つ」ではなく「層」だった

被害のあと、いろいろ調べていて、いちばん腑に落ちた考え方があります。

それは、防犯は一つの強力な対策で完結するものではなく、弱い対策をいくつも重ねるものだ、という考え方です。専門的には多層防御と呼ぶようです。

我が家の被害を振り返ると、これが痛いほどよく分かります。玄関にはカメラがありました。でも、犯人はそのカメラにスプレーをかけて視界を奪い、それでも構わず窓を割って入ってきました。「カメラがあるから大丈夫」という一枚の壁は、あっさり越えられたわけです。

一枚の壁は、破られたら終わりです。でも、壁が何枚もあれば、一枚破られても次がある。一枚目で諦めさせられればそれでよし、諦めなくても、二枚目、三枚目で時間を稼げる。空き巣は時間がかかることを何より嫌うと言われているので、「面倒くさい家だ」と思わせるだけでも意味がある。

そう考えてから、我が家は防犯を「層」で組み直しました。外側から内側に向かって、四つの層です。

  • 第一層:そもそも狙われない(気づかせない)
  • 第二層:入りにくくする(時間を稼ぐ)
  • 第三層:入られても記録する(証拠を残す)
  • 第四層:入られても盗む物がない(諦めさせる)

順番に書いていきます。

第一層:いちばん安い防犯は「留守を言わない」こと

警察の人が来てくれたとき、聞かれたことがあります。

「旅行に行くことを、SNSに上げたり、誰かに話したりしていませんでしたか」と。

このとき、背筋が少し寒くなりました。空き巣にとっていちばんありがたい情報は、高そうな家具でも、立派な表札でもなく、「この家は今、留守だ」という一点です。そして、その情報を、私たちは知らないうちに自分から漏らしているかもしれない。

だから、お金が一円もかからない第一層は、情報を出さないことでした。

具体的には、こうしました。旅行や帰省の予定を、出かける前にSNSに書かない。書くとしても、帰ってきてから「行ってきました」と過去形で書く。家を長く空けることを、不特定多数に分かる形では言わない。郵便受けに郵便や新聞を溜めない(溜まっていると留守がバレる)。

これは設備でも何でもなく、ただの習慣です。でも、警察の人の言葉を借りれば、いちばん効くのにいちばん見落とされている層でもあります。お金をかける前に、まずここを締めました。

第二層:入りにくく、面倒くさくする

次に、物理的に「入りにくい家」にしました。

我が家の被害は窓割りでした。なので、開口部まわりを中心に手を入れています。具体的な配置はぼかして書きますが、考え方としては「一つの鍵を、二つにする」「ワンアクションを、ツーアクションにする」です。

玄関には、もとの鍵に加えて補助錠を足しました。鍵が二つあるだけで、こじ開けにかかる時間は単純に倍以上になります。空き巣が侵入を諦める目安は「五分」と言われていて、時間を稼ぐことそのものが防犯になります。

夜の在宅時には、チェーンロックも使うようにしました。これは外からの侵入というより、在宅中の安心のためです。妻が夜の音に敏感になっていた時期、チェーンがかかっているというだけで、少しだけ眠りやすくなったようでした。

それから、家のまわりにセンサーライトを増やしました。人が近づくとパッと点く、あれです。暗がりにまぎれて作業したい空き巣にとって、急に明るくなるのはかなり嫌なものらしく、これは安いわりに効く層だと思っています。点灯したときに「見られているかもしれない」と思わせるだけでいい。

このあたりは、一つひとつは数千円から、高くても一万円台で済むものばかりです。お金をかけずにできることから始める、という意味でも、第二層は手をつけやすい層でした。

第三層:壊されても、記録は外に残す

ここが、我が家がいちばん力を入れたところです。

被害のとき、玄関のカメラはスプレーをかけられました。レンズを潰されたわけです。普通なら、これで映像は終わりだと思います。

でも、映像は残っていました。

我が家のカメラは、撮った映像を本体ではなくクラウドに上げる仕組みにしていました。だから、レンズにスプレーをかけられる「前」の、犯人が近づいてくる瞬間の映像は、しっかりクラウドに残っていたんです。スプレーをかけている、まさにその姿まで写っていました。その映像は、警察に提出しました。

この経験から、第三層の方針が決まりました。「カメラは壊される前提で考える。そして映像は必ず家の外(クラウド)に残す」です。

そのうえで、カメラの台数を増やしました。一台なら、それを潰されたら終わりです。でも複数あれば、一台を潰しているあいだに、別の角度の一台が、その潰している姿を撮る。一台ずつは安いカメラでも、台数を重ねること自体が一つの層になります。

実は、被害後にいちばん安心したのが、このカメラの増設でした。設備として強くなったというより、「もし次に何かあっても、今度は複数の角度から記録が残る」と思えることで、気持ちが落ち着いた。妻が夜の音に身構える回数も、少しずつ減っていきました。記録が残るという安心は、思っていた以上に心に効くものでした。

カメラの設置場所や台数の詳細は、防犯上ここには書きません。ただ、「壊される前提・記録は外に」という考え方だけ、持って帰ってもらえたらと思います。

第四層:盗む物がない、と分かる家にする

そして最後の層が、いちばん根っこにある考え方です。

前の記事でも書いたとおり、我が家には盗む価値のある物がほとんどありません。資産は証券口座の中にあって、家にはありません。支払いはほぼキャッシュレスなので、家にある現金は、子どもの小遣いと、財布の千円札が数枚あるくらいです。高価な貴金属も、大金のタンス預金もありません。

これは、投資を続けてきた結果として、たまたまそうなった面が大きいのですが、防犯としては最強の層だと思っています。どんなに頑丈な鍵より、「ここには盗む物がない」という事実そのものが、空き巣の動機を消します。

ただ、一つ足りないことに気づきました。盗む物がないだけでは不十分で、「盗む物がなさそうだ」と外から分かることが大事なんです。

立派な車、高そうな外構、大きな表札、ブランドの紙袋がよく見える玄関。こうした「お金がありそうな気配」は、それ自体が空き巣を引き寄せます。だから我が家は、外から見て「ここは派手じゃない、何もなさそうだ」という佇まいを、むしろ意識して保つようにしました。資産があってもなさそうに見せる、というのは、地味ですが効く第四層です。

お金を家に置かない暮らしと、それが外からも分かる佇まい。この二つで、「わざわざ入る価値のない家」になることを目指しています。

それでも、まだ完成していない

ここまで四つの層を書いてきましたが、正直に言うと、我が家の防犯はまだ完成していません。

いま構想しているのは、「留守番モード」の自動化です。家を空けるときに一声かけたら、時間帯に合わせて部屋の明かりが自動でついたり消えたりして、まるで人がいるように見せる。テレビが自動でついて音が漏れる。そういう「在宅のフリ」を、スマートホームの仕組みで自動的にやらせる構想です。

第一層(留守を悟らせない)を、習慣だけでなく設備でも固めたい、ということです。実は、留守中でも家の中でロボット掃除機が動いて物音がしているだけでも、外から見た「気配」は変わります。掃除の自動化が、思わぬところで防犯の気配づくりにつながっていたりもします。

この留守番モードは、まだ検証の途中なので、まとまったら別の記事で書こうと思っています。

防犯に「これで完璧」という終わりはないのだと思います。一つの壁を立てれば、それを越える方法を考える人がいる。だから、完璧を目指すのではなく、層を一枚ずつ重ねて、「この家は面倒くさい」「ここには何もなさそうだ」と思わせ続ける。それが現実的な落としどころなんだろうと、今は考えています。

割れた窓を見たあの日から、我が家は少しずつ層を足してきました。設備は確かに増えました。でも、本当に取り戻せてよかったと思うのは、妻が夜の音に身構えなくなったことのほうです。家がまた、安心して眠れる場所に戻ってきた。それが、四つの層の、いちばん上にある目的でした。


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