先に断っておくと、これはいつ・どこで起きた話なのか、わざとぼかして書きます。その理由は、最後まで読んでもらえれば分かります。
家族で長めに家を空けていたあいだに、我が家は空き巣に入られました。
帰ってきたら、台所の窓が割れていた
留守のあいだに、3人組が入っていました。あとから映像で確認すると、全員が目出し帽をかぶっていて、ひとりがカメラに向けてスプレーのようなものを噴きつけ、別のひとりが台所の窓を割って中に入っていました。
帰宅して窓の様子に気づき、すぐに警察を呼びました。指紋を採り、現場を確認してもらい……という、ドラマでしか見たことのない時間が、急に自分の家で始まりました。
正直、いちばんに来た感情は「損した」ではなく「気持ち悪い」でした。知らない人間が、土足で、家族の生活空間にずかずか上がり込んでいた。その事実が、何より怖かったです。小さい子がいる家なら、なおさらだと思います。
でも、何も盗まれませんでした
ひととおり家の中を見て回って、最終的に分かったのは——たぶん、何も盗まれていない、ということでした。
理由は単純で、そもそも我が家には、盗む物がなかったからです。
これ、笑い話のようでいて、わりと現代の本質だと思っています。
いま、家にまとまったお金を置いている人って、どれくらいいるでしょうか。何千万、何億という資産を持っている人でも、その中身はたいてい証券口座の中です。日々の支払いはキャッシュレス。我が家も、家の中にある現金といえば、子どもの小遣いと、財布に入った千円札が数枚あるくらいです。
宝石も高級時計も、ブランド物もありません。テレビやゲーム機を担いで持っていくには、3人がかりでも割に合わない。
皮肉な話ですが、「家に資産を置かない」という、ごく当たり前のお金の置き方そのものが、結果的にいちばん強い防犯になっていたわけです。盗む物がなければ、入る旨味もない。
とはいえ、「盗まれなかったから良かった」で終わらせる気にはなれませんでした。窓を割られ、家に他人が侵入したという事実は変わりません。次は留守に子どもがいるかもしれない。だから、本気で守りを見直すことにしました。
カメラにスプレーをかけられても、映像は残っていた
ひとつ、はっきり効果があったものがあります。玄関まわりに付けていたカメラです。
犯人はカメラを潰そうとスプレーを噴きつけていました。ところが実際にはレンズにかかっておらず、3人の動きは最初から最後まで、しっかり録画されていました。しかも映像はすでに手元の外側(クラウド側)に残っていて、仮にカメラ本体を壊されても消えない状態でした。
ここから得た教訓は、カメラは「壊される前提」で考える、ということです。現場の機械が無事かどうかではなく、映像が別の場所に残るかどうか。ここが効きます。
ただ、本当の問題はもっと手前にあった気がしている
ここからが、この記事でいちばん書きたかったことです。
長く家を空けるそのタイミングで入られたのは、はたして偶然だったのか。私は、たぶん偶然ではなかったと思っています。留守にしていることが、どこかで漏れていたんじゃないか、と。
漏れる経路は、考えればいくらでもあります。「いま家を空けています」と自分で書いた覚えはなくても、周りの人との会話から伝わることもある。旅行や予約に関するメール、届く郵便物、外から見える生活のリズム……。
しかも今は、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と呼ばれる、SNSの闇バイトで実行役を集める犯罪の形が広がっている時代です。警察庁が挙げる家庭向けの対策の中にも、防犯カメラや補助錠と並んで「自宅や資産に関する情報をSNSに載せない」が入っています。
つまり、いちばん効く防犯対策は、鍵でもカメラでもなく——「留守を、人に言わないこと」でした。
この記事で、いつ・どこの話かをわざとぼかしているのは、まさにこれが理由です。発信を続けている身として、自分でこの落とし穴に落ちるわけにはいかない。皮肉なようですが、「ぼかして書く」こと自体が、この記事の結論そのものなんです。
守りは、ちゃんと多層で固めた
そのうえで、物理的な守りも固め直しました。配置の詳細はあえて書きませんが、考え方だけ共有します。
窓は内側のロックに加えて補助錠、夜はシャッターも下ろす。玄関は夜にチェーン。勝手口は上と下の鍵を両方かける(手でやると面倒なので、スマートロックを足して、上下が連動して閉まるようにしました)。屋外にはセンサーライト。玄関と勝手口には外向きのカメラ。
ポイントは、ひとつひとつの強さよりも、「破ってもまだ次がある」と思わせることです。空き巣がいちばん嫌うのは、手間と、時間と、人目。ひとつ突破しても、補助錠があり、音が鳴り、ライトが点き、録画されている——この「面倒くささの層」を見せること自体が、抑止になります。
桃鉄でいえば、攻めのカードより、守りのカードを一枚多めに握っておく感覚に近いかもしれません。
これから増やす「留守番モード」
我が家は経営企画部(=スマートホーム)が得意分野なので、ここからは自動化で守りを足していきます。今まさに仕込んでいるのが、次の4つです。
ひとつ、留守中に玄関が開いたら、アレクサが喋る。人がいる気配を、いきなり音で出します。
ふたつ、オートライトで在宅を偽装する。人の動きや時間に連動して、留守でも部屋の灯りがついたり消えたりするようにする。
みっつ、アレクサに威嚇させる。動きを検知したら、大きめの声やテレビの音を流して、「誰かいる」と思わせる。
よっつ、録画を確実にクラウドへ残す。今回いちばん効いた部分を、徹底する。
どれも、家にいる人の意志でやるものではなく、設定して放っておくだけで勝手に働くものです。投資の積立を「設定して忘れる」のと、まったく同じ発想です。
いちばん安い防犯は、装備じゃなかった
今回いちばん身にしみたのは、何十万円ぶんの機械より、「留守を黙っていること」のほうが、ずっと安くて、ずっと効くという事実でした。
家に資産を置かない。留守をしゃべらない。そのうえで、守りを多層で、できれば自動で固める。これが、トクリュウの時代の、ごく普通の家の守り方なんだと思います。
何も盗まれなかったのは、運が良かったからではなく、たぶん「盗む物がなかった」から。でも、次に守るべきは、物ではなく、家族が安心して眠れる空間のほうです。そこだけは、いくら手間をかけても惜しくありません。
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