我が家は賃貸です。だから住宅ローンを組んだことがありません。ないからこそ、逆に気になっていたことがあります。
住宅ローンの返済予定表というものを、以前ちらっと見せてもらったことがあります。毎月の返済額はずっと同じなのに、その中身の「利息」と「元金」の割合が、月によって全然違う。最初のうちは、返した額のほとんどが利息で、元金はほんの少ししか減っていない。それが終盤になると、ほとんど元金になっている。
同じ金額を毎月返しているのに、なぜ中身の配分が変わるのか。賃貸暮らしの外野目線で、これがずっと引っかかっていました。
以前、なぜインデックス投資で複利が効くのかを、腑に落ちるまで調べたことがあります。あのとき分かったのは、「増えた分にも%がかかるから、後半になるほど加速する」という仕組みでした。住宅ローンにも、似た構造があるのではないか。そう思って、実際に返済表を組んで計算してみることにしました。
結論から言うと、住宅ローンは複利の逆再生でした。そして計算してみると、想像していたよりずっと厳しい数字が並びました。
→ 積み立てているだけなのに、なぜインデックスで複利が効くのか。腑に落ちるまで調べてみた
まず、今の金利で組んでみる
計算を始める前に、金利の水準を調べ直しました。ここで最初の驚きがありました。私が漠然と持っていたイメージと、今の実勢がかなり違っていたのです。
2026年7月時点で、全期間固定のフラット35は年3.1%前後。変動金利は0.8〜1.3%台です。固定金利は1年前と比べてはっきり上がっていて、いわゆる「金利のある世界」に入ったことを、数字で実感しました(金利は毎月改定されるので、ここでは執筆時点の目安としてご覧ください)。
今回は、3,000万円を35年、フラット35の実勢に近い年3.1%の固定金利で借りたと仮定します。返済方式は「元利均等返済」。毎月の返済額が一定になる方式で、多くの住宅ローンで採用されているものです。
計算すると、こうなりました。
- 毎月の返済額:約11万7,000円(35年間ずっと一定)
- 総返済額:約4,920万円
- そのうち利息:約1,920万円
3,000万円を借りて、利息だけで約1,920万円。借入額の6割を超える金額を、上乗せで払う計算です。まずこの時点で、金利3%という数字の重さを思い知りました。
内訳を追うと、たしかに逆転していた
ここからが本題です。毎月11万7,000円という金額は35年間変わりません。ではその中身の「利息」と「元金」の比率が、どう変わっていくのか。年ごとに追ってみます。
| 経過年 | その月の利息 | その月の元金 | 利息の割合 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 約7.8万円 | 約4.0万円 | 66% |
| 5年目 | 約7.2万円 | 約4.5万円 | 62% |
| 10年目 | 約6.5万円 | 約5.2万円 | 55% |
| 20年目 | 約4.6万円 | 約7.1万円 | 39% |
| 30年目 | 約2.0万円 | 約9.7万円 | 17% |
| 35年目(最終回) | ほぼ0円 | ほぼ全額 | 0% |
1年目は、返済額11万7,000円のうち7.8万円が利息です。実に66%。元金として減るのは4万円ほどしかありません。それが年を追うごとに逆転していき、最終回にはほぼ全額が元金になります。
同じ金額を払っているのに、その働きがまるで違う。ここまでは想像どおりでした。ただ、この表を別の角度から見直したとき、思っていた以上に厳しい数字がいくつも出てきました。
計算してみて、いちばん驚いた3つの数字
1つめ。元金が利息を上回るのは、12.8年目でした。
返済額のうち元金のほうが利息より多くなる、いわば「返済の主役が入れ替わる」瞬間。それが12.8年目です。35年ローンの3分の1以上が過ぎるまで、毎月の返済は元金を減らすことよりも、利息を払うことに多く使われている計算になります。
2つめ。10年間で払った1,405万円のうち、元金の返済に回ったのは40%でした。
10年間、毎月11万7,000円を欠かさず払い続けると、支払総額は約1,405万円になります。かなりの金額です。ところが、この10年で減った元金は約556万円。借入額3,000万円に対して、18.6%しか減っていません。
1,405万円払って、借金は556万円しか減っていない。残りの約850万円は、すべて利息として消えています。10年といえば、子どもが生まれてから小学校を卒業するくらいの長さです。それだけ払い続けて、まだ8割以上の借金が残っている。この数字は、正直こたえるものがありました。
3つめ。残高が半分になるのは、22.1年目でした。
35年ローンの折り返し地点は17.5年目です。しかし、借入残高が半分(1,500万円)まで減るのは22.1年目。期間でいえば63%が過ぎたところです。時間の折り返しと、借金の折り返しは、5年近くもずれている。
| 見方 | 折り返し地点 |
|---|---|
| 返済期間(35年)の半分 | 17.5年目 |
| 借入残高が半分になる時点 | 22.1年目 |
期間の真ん中を過ぎても、まだ借金は半分以上残っている。これも、返済初期に利息が偏っていることの結果でした。
なぜこうなるのか。「利息は残高にかかる」から
3つの数字は、すべて同じ一点から生まれています。それは、利息はその時点で残っている残高に対してかかる、というルールです。
借りたばかりの1年目は、残高が3,000万円まるまる残っています。年3.1%がそこにかかるので、月あたりの利息は約7.8万円。返済額11.7万円の3分の2が、これに消えます。元金に回るのは、残った4万円だけです。
ただ、その4万円のぶん、残高はわずかに減ります。すると翌月の利息も、ほんの少しだけ小さくなる。小さくなったぶん、元金に回せる額がわずかに増える。この「利息が減った分だけ元金の返済が加速する」という変化が、35年かけて雪だるま式に積み重なっていきます。
そして残高が半分近くまで減った20年目あたりでは、利息はもう小さく、返済額の大半を元金に回せるようになる。だから終盤は一気に減っていくのです。
ここで、複利の記事で書いたことを思い出しました。資産形成の複利は、「増えた分にも%がかかるから、残高が大きいほど1年の増加額が大きくなる」という仕組みでした。住宅ローンは、これのちょうど逆再生です。
住宅ローンとは、借りたお金が複利で膨らもうとするのを、毎月の返済で押さえつけながら、少しずつ削っている状態です。
借金という雪だるまは、放っておけば利息という雪をまといながら大きくなろうとします。最初は雪だるまが大きいので、つく雪も多い。毎月の返済のほとんどは、「これ以上大きくならないように」するために使われ、「小さくする」ほうにはあまり回りません。終盤、雪だるまが小さくなってようやく、返済のほぼ全部を削るほうに回せるようになる。
増やす側の複利も、減らす側の複利も、効いているのは「残高に対して%がかかり続ける」という、まったく同じ一点でした。
「元金均等返済」なら、この偏りは起きない
ここで、もう一つの返済方式と比べてみます。「元金均等返済」です。
元利均等が「毎月の返済額を一定にする」方式なのに対し、元金均等は「毎月減らす元金の額を一定にする」方式です。同じ3,000万円・35年・年3.1%で組むと、こうなります。
| 元利均等 | 元金均等 | |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 約11.7万円(35年間ずっと一定) | 初回 約14.9万円 → 最終 約7.2万円(右肩下がり) |
| 総返済額 | 約4,920万円 | 約4,631万円 |
| 総利息 | 約1,920万円 | 約1,631万円 |
| 差 | — | 総利息が約289万円少ない |
元金均等は、最初の返済額が元利均等より約3.2万円重くなります。その代わり、元金が最初から一定ペースで減っていくので残高の減りが速く、結果として総利息は約289万円少なくなります。
多くの人が元利均等を選ぶのは、当然といえば当然です。返済が始まる時期は、引っ越し費用や家具の購入も重なり、家計がいちばん苦しい。毎月の額が読めて、しかも軽いほうがありがたい。
ただ、その選択の裏側で「利息を289万円多く払う」という取引をしていることは、知っておいて損はないと思いました。どちらが正解という話ではなく、最初の家計の余裕と、総支払額のどちらを優先するかという選び方の問題です。
繰上返済が「早いほど効く」理由も、これで分かる
ここまで分かると、「繰上返済はできるだけ早いほうがいい」とよく言われる理由も、はっきりします。
同じ100万円を繰上返済(期間短縮型)に回した場合、それが1年目なのか20年目なのかで、削減できる総利息がどう変わるかを計算してみました。
| 繰上返済のタイミング | 削減できる総利息 | 短縮できる期間 |
|---|---|---|
| 1年目に100万円 | 約178万円 | 約23ヶ月 |
| 20年目に100万円 | 約57万円 | 約13ヶ月 |
同じ100万円です。それなのに、1年目に入れれば約178万円の利息が消え、20年目だと約57万円しか消えない。3倍以上の差がつきました。
しかも1年目の繰上返済は、100万円を投じて178万円の利息を消しています。支払わずに済んだ額のほうが、投じた額より大きい。これは金利3.1%が、34年という長い時間をかけて働くはずだった分を、まるごと止めた結果です。
理由はシンプルで、1年目に減らした元金は、その後34年間ずっと「利息を生まない元金」として効き続けるからです。20年目に減らした元金は、残り15年しか働けません。効果を発揮できる期間の長さが、そのまま削減額の差になる。
これは、インデックス投資で「早く始めた人ほど有利」なのと、まったく同じ理屈でした。投資では早く入れたお金が長く複利で育ち、ローンでは早く返した元金が長く利息を生まずに済む。向きが違うだけで、効いているレバーはどちらも「時間」です。
ここでも、いつもの結論に戻ってきました。時間だけは、あとから積み直せません。
→ 年収500万・地方でも、投資の含み益が500万を超えた話(早く入れたお金ほど効く実例)
金利が上がると、何が起きるのか
もう一つ、今回計算していて背筋が伸びたことがあります。金利がわずかに違うだけで、総額がどれだけ変わるかです。
1年ほど前まで、35年固定は1.5%前後で借りられた時期がありました。当時と今(3.1%)で、同じ3,000万円・35年を借りた場合を比べます。
| 金利1.5%(1年ほど前) | 金利3.1%(2026年7月) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 約9.2万円 | 約11.7万円 | 約2.5万円増 |
| 総返済額 | 約3,858万円 | 約4,920万円 | 約1,062万円増 |
| 総利息 | 約858万円 | 約1,920万円 | 約1,062万円増 |
金利が1.6ポイント上がっただけで、総支払額は約1,062万円増えます。借りる額も、返す期間も、まったく同じなのにです。毎月の負担も2.5万円増。これは家計にとって決して小さい額ではありません。
もう一つ、別の角度から見てみます。「毎月11万7,000円までなら返せる」という同じ家計の人が、いくらまで借りられるかという視点です。
- 金利3.1%(今):約3,000万円
- 金利1.5%(1年ほど前):約3,825万円
同じ返済能力なのに、借りられる額が約825万円変わります。金利が上がるというのは、家計から見れば「買える家の選択肢が数百万円ぶん狭まる」ということでもありました。ここは、賃貸暮らしの私には見えていなかった視点です。
変動金利という選択について、少しだけ
ここまでは固定金利で計算しましたが、実際には変動金利を選ぶ人も多く、2026年7月時点では0.8〜1.3%台という水準です。仮に0.8%で同じ条件を計算すると、毎月の返済は約8.2万円、総利息は約440万円まで下がります。固定の1,920万円と比べると、差は非常に大きく見えます。
ただし、これは「今の金利が35年間ずっと変わらなかったら」という前提での数字です。参考までに、途中で金利が上がった場合のイメージも並べておきます。
| 適用金利 | 毎月の返済額 | 総利息 |
|---|---|---|
| 0.8% | 約8.2万円 | 約440万円 |
| 1.8%(+1%) | 約9.6万円 | 約1,046万円 |
| 2.8%(+2%) | 約11.2万円 | 約1,710万円 |
※全期間その金利だった場合の単純比較です。実際の変動金利は途中で変わるため、この通りにはなりません。
直近1年で固定金利がはっきり上昇したように、変動金利も将来上がる可能性はあります。固定と変動のどちらが良いかは今回の本題ではないので深入りしませんが、少なくとも「今の低い返済額がこの先ずっと続く」という前提だけで計算しないほうがよさそうだ、というのが計算してみた実感でした。
賃貸暮らしから見て、分かったこと
私は住宅ローンを組んでいません。返済表を毎月眺める機会も、たぶんこの先しばらくありません。それでも、外から数字だけを追いかけてみて、腑に落ちたことがあります。
住宅ローンは、複利という同じ仕組みが、増やす側ではなく減らす側に働いているだけでした。だから、投資で身につけた感覚がそのまま裏返しで使えます。増やしたいなら早く始める。減らしたいなら早く返す。どちらも、効いているのは残高と時間の掛け算です。
そして、10年払って元金が18.6%しか減らないという数字を見て思ったのは、これは家を買うかどうかの話ではなく、どんな契約でも中身を数字で開けてみるべきだ、ということでした。毎月11万7,000円という金額だけを見ていると、その3分の2が利息だとは気づきません。総額で1,920万円の利息を払っているという実感も湧きません。表に出ている数字と、中で起きていることは、しばしば別物です。
家を買うことそのものは、数字だけで決める話ではないと思っています。住まいには、損得に還元できない価値がたくさんあります。ただ、その決断をするときに、中身の数字を知ったうえで選ぶのと、知らないまま選ぶのとでは、あとから振り返ったときの納得感がまるで違うはずです。
賃貸の私にできるのは、こうして電卓を叩いてみることくらいでした。でも、叩いてみてよかったと思っています。
(この記事の試算は2026年7月時点の金利水準をもとにした一定の前提での計算であり、諸説あります。実際の借入条件・金利・諸費用・団信・住宅ローン控除などは金融機関や個人の条件によって異なります。判断の際は必ず最新の公式情報と、ご自身の条件での試算をご確認ください。)
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