「うちの子だけ?」はたぶん違う。イヤイヤ期も反抗期も、順番どおりに来て順番どおり過ぎていった

上の子がまだ小さかったころ、ごはんをどうしても食べない時期がありました。

昨日まで食べていたものを、今日は断固として拒否する。理由を聞いても、本人にもよく分かっていない。とにかく「いや」なんです。靴下の左右にこだわって泣いたり、自分でやると言って聞かなかったり。今思えば、いわゆるイヤイヤ期だったんだと思います。

ただ、わりとお利口な子だったので、こちらが少し切り替えさせると、わりとすっと進んでくれました。だから当時は、深刻に悩むというより、「なんで急にこうなるんだろう」と、純粋に不思議に思っていた記憶があります。

その「なんで急に」の答えが分かったのは、ずっとあとになってからでした。3人目が生まれて、子育てを少し離れたところから眺められるようになったとき、あることに気づいたんです。

同じことが、順番に来ている。

上の子で起きたことが、中の子でも、ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ形で起きる。これはもう、その子の性格の問題ではなくて、「人間が育つときの順番」なんじゃないか。そう思い始めてから、子どもの「困った行動」の見え方が、だいぶ変わりました。今日はその話を書きます。

今まさにイヤイヤ期や反抗期の真っ只中にいて、「うちの子、大丈夫だろうか」と思っている人に、いちばん読んでほしいと思っています。

目次

子どもの「いや」には、地図があった

子育てをしていると、ある時期に決まって「困った行動」が現れます。そして、それが過ぎると、また別の時期に、別の形の「困った行動」が現れる。渦中にいると、一つひとつが突発的なトラブルに見えます。

でも、発達心理学という分野には、この「いつ、何が起きるか」を整理した、いわば地図のようなものがあります。私はそれを、子育てのかなり後半になってから知りました。

有名なのが、ピアジェという学者がまとめた「認知の発達段階」と、エリクソンという学者がまとめた「心の発達段階」です。難しい話は抜きにして、ざっくり言うと、「子どもは決まった順番で、決まった課題に取り組みながら育っていく」という考え方です。

たとえば、2歳前後の「イヤイヤ」は、ただのわがままではなく、「自分」という意識が芽生えて、自分の意思で世界を動かそうとし始めた証だとされています。エリクソンの整理では、この時期の子は「自分でやりたい」という気持ちと、「でもうまくできない」という現実のあいだで揺れている。だから、自分でやると言い張るし、思いどおりにならないと泣く。あれは、成長しようとして、もがいている姿だったわけです。

知識として知っていると、知らないでは、同じ「いや」を見ても、受け取り方がまるで変わります。

反抗期は、一度ではなく三度来る

多くの人が「反抗期」と聞いて思い浮かべるのは、思春期の、あの激しいやつだと思います。でも実は、子どもの反抗期は、一般に三つの波があるとされています。

順番に並べると、こうなります。

時期の目安呼び名子どもの中で起きていること
1歳半〜3歳ごろ第一次反抗期(イヤイヤ期)「自分」の意識が芽生え、意思を通そうとする
5歳〜7歳ごろ中間反抗期言葉と理屈が育ち、口答え・へりくつが増える
11歳〜15歳ごろ第二次反抗期(思春期)親から自立し、自分は何者かを探し始める

※時期はあくまで目安で、個人差がとても大きいものです。

この表を見たとき、私はかなり腑に落ちました。上の子の「口答えが増えたな」という時期も、「やたら秘密を持つようになったな」という時期も、全部この地図の上にあった。突発的なトラブルだと思っていたものが、実は「予定表どおり」に来ていたわけです。

そして大事なのは、どの波にも、ちゃんと意味があるということです。第一次は「自分」の誕生。中間反抗期は「考える力」の芽生え。第二次は「自立」の準備。どれも、子どもが次の段階に進むために、必要だから起きている。反抗は、故障のサインではなく、成長のサインなんです。

3人いると、家のどこかが、だいたい反抗期

ここで、ちょっと面白い(そして親としてはちょっと笑えない)計算をしてみました。

きょうだいが3人いて、それぞれ2歳差だとします。さきほどの三つの反抗期の波が、暦の上でどう重なるかを、第1子が0歳から19歳になるまでの20年間で並べてみました。

結果が、なかなかの絵になります。

第1子の年齢第1子第2子第3子同時に反抗期
5歳中間イヤイヤ2人
7歳中間中間イヤイヤ3人
9歳中間中間2人
13歳思春期1人
15歳思春期思春期思春期3人
17歳思春期思春期思春期2人

(一部抜粋。時期はモデルケースの目安です)

このシミュレーションで分かったことが、いくつかあります。

まず、第1子が0歳から19歳になるまでの20年間のうち、なんと18年間は、家の中の誰かしらが何らかの反抗期にいる計算になりました。20年のうち18年です。きょうだいが多いと、「全員が落ち着いている平穏な時期」のほうが、むしろ貴重なんです。

さらに、2人以上が同時に反抗期にいる年が、20年のうち10年もありました。そして、3人が同時に反抗期に突入する年も、2回ありました。1回目は、上の子が中間反抗期、真ん中がイヤイヤ期に入るころ。2回目は、3人が次々に思春期に入る、いわば反抗期のクライマックスです。

子ども1人あたりで見ても、三つの波を合計すると、反抗期で過ごす期間は約7.5年。18年の子育てのうち、4割くらいは何らかの反抗期、という計算になります。

この数字を見て、私はむしろ安心しました。反抗期がないほうがおかしいくらいなんです。「うちの子は反抗期がひどい」のではなく、「子育てとは、もともとそういうもの」だった。

統計で見ても、「あなただけ」ではない

数字の話をもう少し続けます。

イヤイヤ期について、一般によく言われるのは、ほとんどの子が通る、ということです。英語圏では「terrible twos(魔の2歳児)」という言葉があるくらいで、2歳前後にピークが来るのは、文化を超えて共通だとされています。調査によっては、イヤイヤ期で困った経験のある親は、8割から9割にのぼるとも言われます。

これは、裏を返せば、こういうことです。今あなたが「うちの子、大丈夫だろうか」と悩んでいるなら、その悩みは、世の中の親の8割9割が、同じように通ってきた道だということです。あなたの育て方が悪いわけでも、あなたの子が特別に困った子なわけでもない。みんな、ここを通る。

そして、もう一つ大事な統計的事実があります。イヤイヤ期には、終わりがあるということです。一般には、1歳半ごろから始まって、2歳でピークを迎え、3歳から4歳ごろには、だんだん落ち着いていくとされています。今がいちばんつらい時期だとしても、それは、出口に向かっている途中なんです。

嵐の中にいると、この嵐が永遠に続くように感じます。でも、地図と統計は、「この嵐には、だいたいの規模と、だいたいの終わり時がある」ことを教えてくれます。

知識があとから来て、肩の力が抜けた

正直に言うと、私は1人目のとき、こういうことを何も知りませんでした。だから、目の前の「いや」に、いちいち一喜一憂していたと思います。

知識があとからやってきて、いちばん変わったのは、子どもへの対応のテクニックではなく、私自身の心のほうでした。

目の前で子どもが「いや」と泣いているとき、それを「困ったトラブル」だと思うと、こちらもつい、感情的になります。なんで言うことを聞かないんだ、と。でも、それを「ああ、今ちょうど自分の意思が芽生えている時期なんだな」と、地図の上に位置づけられると、不思議と、怒りが半分くらいになるんです。これは予定どおりの通過点であって、この子が壊れたわけでも、私が失敗したわけでもない。そう思えるだけで、ずいぶん楽になりました。

これは、以前に書いた「抱き癖」の話と、まったく同じ構造でした。あのときも、応答的に抱くことが子どもの安心の土台になる、という知識が、あとから私の選択を後押ししてくれました。先に手が動いて、あとから理屈が「それでよかったんだよ」と言ってくれる。子育ては、その繰り返しだったような気がします。

もちろん、地図を持っていても、渦中はやっぱり大変です。3人同時に反抗期、なんて年は、地図があろうとなかろうと、しんどいものはしんどい。でも、「これは順番どおりだ」「いつか終わる」と分かっているのと、分かっていないのとでは、しんどさの質が違います。出口の見えない嵐と、終わりの分かっている嵐は、同じ嵐でも、耐え方が変わるんです。

いま、渦中にいる人へ

我が家は今、下の子がまだ小さくて、これから一通りの反抗期を、もう一度迎えることになります。

でも、今度は、地図を持っています。「ああ、来たな。順番どおりだな」と、少しだけ余裕を持って迎えられそうな気がしています。むしろ、この子の「いや」が始まるのを、成長の証として、ちょっと楽しみにしている自分すらいます。

今まさに、子どもの「いや」や反抗に、心をすり減らしている人がいたら、伝えたいことは一つです。

それは、故障ではありません。予定どおりの通過点です。あなたの育て方のせいでも、あなたの子が特別なわけでもない。世の中の親の大多数が通ってきた、決まった順番の、決まった嵐です。そして、どの嵐にも、ちゃんと終わりがあります。

子どもの「いや」は、次の段階に進もうとする、成長の足音です。順番どおりに来て、順番どおりに過ぎていく。その地図を、少しだけ頭の隅に置いておくと、目の前の嵐が、ほんの少しだけ、穏やかに見えるかもしれません。


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