レベルが上がるほど、もらえる経験値が増えていく。あれが複利の正体だったと思う

我が家でお金の話をするとき、私はだいたい桃鉄を持ち出します。目的地に向かうこと、物件を買うこと、貧乏神に取り憑かれないこと。あのゲームは、お金の動きを説明するのに本当にちょうどいい。

でも今日は、あえてドラクエでたとえてみようと思います。

理由は、桃鉄が「経営」のゲームなのに対して、ドラクエは「成長と旅」のゲームだからです。資産形成は、確かに経営に似ています。でもそれ以上に、一人の人間がレベルを上げながら、長い旅をしていく話に似ている。少なくとも私自身は、自分の15年を振り返ると、経営の記録というより、冒険の記録のように感じます。

うまくたとえられる自信はありません。でも、投資の何がいいのか、なぜ早く始めたほうがいいのか、複利とはどういうことなのか。これを、数字の話としてではなく、勇者の旅の話として書いてみたいと思います。

目次

新社会人のころの私は、ゲームを買ってすらいなかった

まず、自分のレベルの話から始めます。

新社会人のころの私は、投資という意味では、ゲームを買ってすらいませんでした。テレビCMで「ドラクエの新作が出るらしい」というのを、ぼんやり眺めているレベル。投資という言葉は知っていたけれど、それは自分とは関係のない、どこか遠い世界の話でした。お金は銀行口座に置いておくもので、増えるものだとは思っていなかった。

結婚したころに、やっと「ホイミ」を覚えたくらいでしょうか。少額の積立を始めて、お金は減らさないように守るだけでなく、少し攻めることもできるらしい、と気づいた段階です。まだ呪文は一つだけ。フィールドにもおそるおそる出ている程度でした。

子どもが生まれたころで、レベル20くらいだったと思います。守るべきものができて、真剣にお金と向き合うようになった。装備も少しずつ揃って、戦い方も分かってきて、でもまだ世界の全体像は見えていない。そんな時期でした。

そして今。私はちょうど、職業選択を考えるくらいのレベルにいます。ドラクエでいう転職です。これまで積み上げてきたものを土台に、次にどう生きるかを選べる場所まで来た。1年限定でゆるく暮らしてみて、この先の働き方を選び直そうとしているのは、まさに転職の祠の前で立ち止まっているような感覚です。

振り返ると、最初の数年がいちばんもったいなかった。ゲームを買ってすらいなかった時期。あのとき始めていれば、と思わなくはありません。でも、その「早く始めればよかった」の正体を、ちゃんと言葉にしたいと思います。

まず、一回バトルをしないとレベルは上がらない

投資の話になると、すごく丁寧に準備をする人がいます。本を何冊も読んで、YouTubeを見て、どの証券口座がいいか、どの銘柄がいいか、徹底的に調べる。

それ自体は悪いことではありません。でも、ドラクエでいえば、これは「装備屋をずっと眺めている」状態です。どの剣がいいか、どの盾がいいか、店先で延々と悩んでいる。知識を入れて、装備を選んで、準備は万全。でも、一度もフィールドに出ていない。

レベルというのは、バトルをしないと上がりません。これは当たり前のことなのに、お金の話になると、なぜか忘れられがちです。どんなに良い装備を揃えても、どんなに攻略法を頭に入れても、最初のスライムを一匹倒さないかぎり、経験値はゼロのままです。

私の感覚では、多くの人がこの「装備を集めて、知識を入れている段階」で止まっています。準備はしているのに、まだ一回も戦っていない。それはとても惜しい。なぜなら、後で書くように、経験値の旅はとにかく早く始めた人が有利だからです。

最初のバトルは、たいしたものではありません。月に数千円でも、数万円でもいい。証券口座を開いて、積立の設定を一つすること。それが、フィールドに出てスライムを一匹倒すことです。最初にもらえる経験値は、本当に雀の涙です。「これだけ?」と思うはずです。私もそうでした。でも、話はそこからしか始まりません。

経験値テーブルの後半で、複利は牙をむく

ここからが、いちばん書きたかったところです。

ドラクエをやったことがある人なら、経験値テーブルの感覚を覚えていると思います。序盤、レベル1からレベル2に上がるのは、スライムを数匹倒せばいい。簡単です。でも、レベルが上がっていくと、次のレベルまでに必要な経験値はどんどん増えていきます。

ここだけ聞くと「後半は大変になる」という話に聞こえます。でも、実際にプレイしていると、逆の体感があります。後半になるほど、一回のバトルでもらえる経験値が桁違いに増えるんです。序盤はスライム一匹で1ポイント。でも終盤になると、強い敵を一体倒すだけで、序盤では考えられないような経験値がどさっと入る。だから、レベルが上がるスピードは、むしろ加速していく感覚すらあります。

複利というのは、まさにこれだと思います。

最初は、本当にちょっとしか増えません。月に3万円を積み立てても、最初の年に増えるお金なんて、外食を数回我慢したくらいの額です。「これ、意味あるのかな」と思う。私も何度も思いました。序盤のスライムです。

でも、続けていくと、増え方そのものが変わっていきます。仮に年5%で運用できたとして、月3万円を積み立てたとします。雑な皮算用ですが、数字で書いてみます。

  • 最初の10年で積み上がるのは、だいたい460万円くらい(自分で入れたお金は360万円)。
  • 次の10年が終わると、合計でだいたい1,230万円。
  • そして30年たつと、合計でだいたい2,500万円(自分で入れたお金は1,080万円)。

ここで見てほしいのは、最終的な金額そのものより、「各10年でいくら増えたか」のほうです。

  • 最初の10年で増えたのは、約460万円。
  • 次の10年で増えたのは、約770万円。
  • 最後の10年で増えたのは、約1,260万円。

毎月入れているお金は、ずっと同じ3万円です。やっていることは何も変わっていません。なのに、増える額は460万、770万、1,260万と、後半になるほど大きくなっていく。これが、経験値テーブルの後半です。同じバトル(同じ積立)でも、レベルが上がっているから、もらえる経験値(増える額)が段違いになる。

複利は、序盤はまったく頼りになりません。むしろ「こんなの意味あるのか」と心が折れそうになる。でも、後半で牙をむきます。そして、その後半にたどり着けるかどうかは、序盤のスライム狩りを、つまらないと言って投げ出さなかったかどうかで決まります。

10年早く始めた勇者が、最後につける差

「早く始めたほうがいい」というのは、投資の話で何度も言われることです。でも、なぜそんなに早さが大事なのか、経験値の話で考えると腑に落ちます。

同じ「月3万円・年5%」で、60歳をゴールに設定して、二人の勇者を比べてみます。

  • 勇者A:25歳から始めて、60歳まで35年間、淡々と積み立てる。
  • 勇者B:25歳のときは動かず、35歳から始めて、60歳まで25年間、積み立てる。

二人が自分で入れるお金の差は、最初の10年ぶんだけ。額にして360万円です。

ところが、60歳の時点でどうなっているか。あくまで年5%と仮定した皮算用ですが、勇者Aは約3,400万円、勇者Bは約1,800万円になります。自分で入れたお金は360万円しか違わないのに、最後の差は1,600万円以上。

何が起きているかというと、勇者Aは、勇者Bより10年も早く「経験値テーブルの後半」に入っているんです。10年先にレベルを上げ始めたから、後半の、一回のバトルで大量の経験値が入る時期を、10年ぶん長く味わえる。先にフィールドに出た、それだけの差が、最後にこれだけ開く。

これは、若いうちに始めることの優位というより、「複利の後半を、できるだけ長く過ごすことの優位」だと思っています。だからこそ、思い立った今がいちばん若い。完璧な装備を揃えてから、と言っているあいだにも、経験値テーブルの後半は、少しずつ遠ざかっていきます。

ゴールド、呪文、職業。戦略はいくつもある

ドラクエに戦い方がいくつもあるように、投資にもいろんな戦略があります。

呪文にあたるのが、NISAやiDeCoのような制度でしょうか。うまく使えば、戦いが有利になる。ただ、呪文を覚えること自体が目的になってはいけなくて、あくまでレベル上げ(積立)を助けるものです。

装備にあたるのが、証券口座や、積み立てる商品。これは一度しっかり選んで揃えてしまえば、あとは付け替える必要はそうそうありません。私は全世界株のインデックスファンドという装備を選んで、もう何年も付け替えていません。

職業選択、つまり転職も大事です。どう働いて、どれだけ稼ぐか。投資の世界では入金力と呼ばれますが、要するに、フィールドに出る前の「稼ぎ」です。レベル上げの効率は、この職業によってもかなり変わります。

そしてゴールド。これが少し厄介で、お金を「ゴールド」という概念で考えると、かえって分かりにくくなる気がしています。現実のお金は、ゴールドのように宿屋やアイテムに使ってなくなるだけのものではなくて、フィールドに出して経験値を生む種にもなる。使うお金と、育てるお金は、頭の中で別の財布に分けておいたほうがいい。我が家が現金と投資をはっきり分けて考えているのは、たぶんそういうことです。

戦略はいくつもあって、どれが正解ということはありません。ただ、どの戦略を選んでも共通しているのは、「フィールドに出て、淡々とレベルを上げる」という一点だけは省略できない、ということです。

一人旅より、パーティのほうが強い

ドラクエは、途中から仲間が増えます。一人で旅を続けるより、パーティを組んだほうが、当然強い。

我が家でいえば、パーティは妻であり、子どもたちです。

お金のことを、夫婦の片方だけが抱えていると、すごく心細い。一人旅で全滅したら、それで終わりです。でも、二人で同じ方向を向いて旅をしていると、片方が倒れても立て直せるし、何より、長い旅を続けやすい。我が家が夫婦で家計を合わせて、同じ運用をしているのは、パーティを組んでいるからです。

子どもたちは、まだ小さなパーティメンバーですが、いずれ自分のレベルを上げ始めます。そのときに、親の冒険を少しでも見ていてくれたら、彼らの序盤のスライム狩りは、私よりずっと早く始まるはずです。それは、私が彼らに渡せる、お金そのものよりも価値のある引き継ぎかもしれません。

そして、ドラクエと現実が決定的に違うところが、一つあります。

リセットができないことです。

ゲームなら、全滅しても教会から再開できるし、最初からやり直すこともできる。でも、人生の冒険には中断セーブはあっても、リセットはありません。時間は巻き戻せない。だからこそ、早く始めることに意味があるし、続けることに意味がある。お金は積み直せても、時間は積み直せない。これは、私がお金の話をするとき、いちばん根っこに置いている考えです。

クリアした、その後に何をするか

最後に、クリア後の話をします。

投資の世界には、FIRE(経済的自立と早期リタイア)という言葉があります。十分な資産を築いて、働かなくてもよくなる状態。ドラクエでいえば、ラスボスを倒してエンディングを迎える、クリアの瞬間です。

でも、私はここに、一つ気をつけたいことがあると思っています。

ゲームをクリアした瞬間に、やることが何もないと、人はけっこう途方に暮れるんです。あれだけ夢中だった冒険が終わって、コントローラーを置いて、さて何をしようか、と。FIREも同じで、「働かなくていい状態」になること自体をゴールにしてしまうと、いざそこに着いたとき、やりたいことが見つからずに後悔するかもしれない。

だから、私が理想だと思っているのは、完全にクリアして電源を切ることではなく、経済的には自立したうえで、それでもゲームを続けることです。お金のために戦うのではなく、好きだから戦う。やりたいことがあるから、ゆるく働き続ける。クリア後のやり込み要素を、楽しんでいる状態。

1年限定でゆるく暮らしてみようとしている今の私も、たぶん完全に電源を切りたいわけではないんだと思います。次にどんなクエストを受けるか、転職の祠の前で考えている。クリアそのものより、クリアした後に何をして遊ぶかのほうを、ちゃんと用意しておきたい。

あえてドラクエでたとえてみましたが、伝えたかったことは、実はとてもシンプルです。

複利は、序盤は頼りなくて、後半で牙をむく。だから、早くフィールドに出た人ほど強い。そして、装備を眺めているだけでは、レベルは一つも上がらない。

まずは、スライムを一匹倒すところから。経験値の旅は、そこからしか始まりません。


関連記事・装備品

ゼロから1億円まで、私が歩いた順番を全部書きます。まめ家の新人研修【第0話・全体マップ】
【桃鉄で解説】新NISA「年始一括」が正解。物件を買わない社長は負ける
オルカンを淡々と積み立てる。これが連載の本丸です。まめ家の新人研修【第3話・積立編】
【1億円FIRE】の落とし穴。8,000万でゆる労働の方が年収1.8倍になる数学的事実
📋 社内装備規程:経営企画部の装備を見る
👋 代表挨拶:まめ家の経営理念

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次