月5万を20年積んでも利益631万。それでも私がこどもNISAを「早く・少なく」埋める理由

「毎月5万円をオルカンに積み立てて、20年間コツコツ運用しても、利益は631万円にしかならない」

こういう投稿がXで流れてきて、それなりに伸びていました。趣旨としては「みんなNISAに夢を抱きすぎだから現実を突きつける」という話です。

読んだとき、まず思ったのは「その計算、たぶん合ってる」でした。

ちょうど2027年1月からこどもNISAが始まります。年60万円まで、生涯600万円まで。我が家もそろそろ方針を決めないといけないので、この631万円の検算ついでに、こどもNISAの中身も一通り調べてみました。

そこで一つ、勘違いしていたことが見つかりました。

こどもNISAの600万円は、非課税枠が600万円増える制度ではありません。 本人が将来使える生涯枠1,800万円の、内数です。

これに気づいてから、この制度の見え方がだいぶ変わりました。今日はそこまで書きます。


目次

まず、631万円は正しい計算なのか

月5万円を20年。元本は5万×12ヶ月×20年で1,200万円です。ここから利益が631万円ということは、最終的に1,831万円ということになります。

逆算してみました。

想定利回り20年後の資産元本利益
年3%1,634万円1,200万円434万円
年4%1,819万円1,200万円619万円
年4.06%1,831万円1,200万円631万円
年5%2,029万円1,200万円829万円
年7%2,538万円1,200万円1,338万円

※毎月同額を積み立て、年利は月複利で計算。手数料・信託報酬は考慮せず

出ました。年4.06%想定の数字です。

この手の「現実を突きつける」系の数字は、だいたい前提の置き方で倍くらい変わります。数字そのものより、どの利回りで置いたかを先に見たほうがいいです。

私は普段、皮算用するときは年5%で置いています。オルカンの実績はもっと良いのですが、良い数字で夢を見ても仕方がないので、少し辛めに置く癖がついています。

そのうえで、631万円という数字については、私はこう並べ替えます。

見るべきは「利益」ではなく「総額」。利益631万円という切り取り方だと物足りなく見えますが、実際に手元にあるのは1,831万円です。この1,200万円の元本は消えたお金ではなく、使わずに残った自分のお金です。比べる相手は「もっと増えた人」ではなく、「積み立てなかった自分」のはずです。

そして631万円には税金がかかりません。

特定口座NISA
利益631万円631万円
税金(20.315%)128万円0円
手取りの利益503万円631万円

128万円。「631万円しか増えなかった」ではなく「631万円まるごと残った」という話です。

さて、この「非課税で守れた額」という見方が、後半の主役になります。


こどもNISAの中身

2027年1月から始まるこどもNISAの、現時点で公表されている枠組みです。

項目内容
対象0歳〜17歳
年間投資枠60万円(月5万円)
非課税保有限度額600万円
投資対象つみたて投資枠と共通の投資信託(成長投資枠は使えない)
投資手法積立投資のみ
払出し原則不可。12歳以降は本人のための使途である旨と本人の同意を届け出れば可能
18歳到達時手続き不要で、自動的に成年NISAのつみたて投資枠へ移行
開始2027年1月(予定)

そして、いちばん大事なのがここです。

この600万円は、本人が将来使う非課税保有限度額1,800万円の内数です。

こどもNISAで使った簿価と、成人後のつみたて投資枠・成長投資枠で使う簿価を合算して、1,800万円を超えない範囲で使う。そういう設計になっています。

私はここを誤解していました。「子ども1人につき600万円、枠が増えるんだな」と読んでいたんです。増えません。

18歳になった子が持っている枠は、こうです。

使える生涯枠
こどもNISAで600万円埋めた子残り1,200万円
こどもNISAを使わなかった子1,800万円まるごと

こう並べると、埋めなかったほうが有利に見えます。

実際、「じゃあ意味ないじゃん」と思った人もいると思います。私も一瞬そう思いました。

でも、逆でした。


枠は「簿価」で数えられる

ここが今日いちばん書きたいところです。

非課税保有限度額1,800万円は、買ったときの値段(簿価)で数えます。時価ではありません。

これは以前、NISAで倍になった資産を売ると枠がいくら戻るのかを調べたときに分かったことで、あのときは「売っても取得価額分しか枠は戻らない」という残念な話として書きました。

同じルールを、買う側から見るとこうなります。

安いうちに買っておけば、その資産がどれだけ育っても、枠の消費は買ったときの金額のまま。

つまり枠1円あたりで、どれだけ大きな資産を非課税の器に入れられるかが変わってきます。

年5%として、18歳の時点でこうなっています。

使った枠(簿価)器の中にある資産
0歳から10年で600万円入れた子600万円1,171万円
18歳になってから600万円入れる子600万円600万円

同じ600万円の枠を使って、片方は1,171万円が非課税の器に入っていて、もう片方は600万円です。約2倍。

そして時間が経つほど開きます。子が30歳になった時点で見ると、こうです。

使った枠30歳時点の資産非課税で守れた利益枠1円あたり
0歳から10年で600万円600万円2,102万円1,502万円2.50円
0歳から毎月5万円・10年600万円2,056万円1,456万円2.43円
18歳から10年で600万円600万円854万円254万円0.42円

※年5%・月複利。元本はいずれも600万円ちょうど

枠1円あたりで守れた利益が、5.9倍違います。

利回り別に見てもこうです。

想定利回り0歳スタートの枠効率18歳スタートの枠効率倍率
年3%1.13円0.24円4.8倍
年5%2.50円0.42円5.9倍
年7%4.72円0.64円7.4倍

1,800万円という枠は、誰にとっても1,800万円です。増やせません。増やせないものが手元にあるとき、考えるべきは「いくら入れるか」ではなくて「その枠で、いくら守れるか」のほうです。

こどもNISAの600万円は、その1,800万円のうち600万円分を、18年早く使わせてもらえる権利だと私は理解しました。枠が増えるのではなく、枠を前借りできる。

そして枠は簿価で数えるので、前借りして安いうちに埋めるほど、同じ600万円の枠がよく働く。

「少ない金額で埋められる」ことが、この制度の欠点ではなくて、いちばんおいしい部分だったわけです。


生涯枠1,800万円を、最後まで使い切るとどうなるか

ここまでの話を、生涯枠まるごとで見てみます。

同じ月5万円ペースで、1,800万円の枠を使い切る2人を比べます。

入れ方拠出完了
Xさん0〜9歳にこどもNISAで600万円 → 18歳から月5万円で1,200万円37歳
ZさんこどもNISAは使わず、18歳から月5万円で1,800万円47歳

投じる元本はどちらも1,800万円。使う枠もどちらも1,800万円。ペースも同じ月5万円です。違うのは、こどもNISAという前借り制度を使ったかどうかだけ。

両方が拠出を終えている50歳時点で比べます。

想定利回りXさんZさん差
年3%4,647万円3,077万円1,570万円
年5%9,237万円4,513万円4,724万円
年7%1億9,030万円6,732万円1億2,298万円

年5%で4,724万円の差。しかもXさんは10年早く拠出を終えているので、37歳から47歳の10年間、月5万円が丸ごと自由になっています。

数字が大きくなりすぎて現実味が薄れてきたと思うので言っておくと、これは予測ではありません。あくまで「同じルールで置いたらこういう構造になる」という話です。年7%の行は、正直あまり真に受けないでください。

見てほしいのは金額そのものではなくて、同じ枠・同じ元本・同じペースなのに、開始年齢だけでこれだけ形が変わるということのほうです。


で、どう埋めるのがいいのか

ここからは細かい話です。0歳から600万円を埋めると決めたとして、その中でもいくつか選択肢があります。同じ600万円で比べました。すべて年5%、元本は600万円ちょうどに揃えています。

入れ方18歳時点30歳時点
Aさん年初に60万円を一括 × 10年1,171万円2,102万円
Bさん毎月5万円 × 10年1,145万円2,056万円
Cさん毎月2.8万円 × 18年963万円1,729万円

10年で埋めるか、18年でゆっくりか

AさんとCさんの差が大きい。18歳時点で208万円、30歳時点で373万円です。

こどもNISAが「年60万・生涯600万」という、ちょうど10年で埋め切れる設計になっているのは、たぶん偶然じゃないと思っています。埋め切れるように作られている。だったら埋め切ったほうがいい、というのが素直な読み方です。

枠が簿価カウントである以上、後ろに伸ばすほど「高くなってから買う」ことになって、枠あたりの効率が落ちていきます。

年初一括か、毎月か

AさんとBさんの差は、18歳時点で26万円。

……正直、思ったより小さいですよね。私も計算する前は、もっと差がつくと思っていました。

想定利回り毎月5万×10年年初一括60万×10年差
年3%885万円897万円+12万円
年5%1,145万円1,171万円+26万円
年7%1,478万円1,524万円+46万円

※すべて18歳時点

それでも私は年初一括を選びます。理由は3つです。

追加コストがゼロ。26万円を稼ぐために追加で入金する額はゼロ円で、リスクを上げたわけでもない。設定のタイミングを変えただけです。

期間が延びるほど差が開く。

経過年初一括毎月差
10年後792万円775万円17万円
18年後1,171万円1,145万円26万円
30年後2,102万円2,056万円46万円
40年後3,425万円3,349万円75万円

差そのものが複利で育ちます。子どもの口座は大人の口座より運用期間が圧倒的に長いので、一括の優位が効く時間も長い。

そして、これは「早く始める」と同じことをしている。年初一括というのは、要するに12ヶ月分を1月に前倒しする操作です。1回あたり平均5.5ヶ月の前倒しを、毎年くり返している。

つまり年初一括の正体は、「早く始める」を毎年やり直していることなんです。別々のテクニックに見えて、同じ一本の軸の上にあります。

早く始めたほうがいい。だから、始めたあとも毎年早く入れたほうがいい。それだけです。

なぜ一括が有利になるのかという理屈は、ドルコスト平均法はリスクを後回しにしているだけのほうに全部書きました。

ただし注意点があります。 こどもNISAは「投資手法は積立投資のみ」とされていて、成長投資枠は使えません。現行NISAのつみたて投資枠だとボーナス設定で特定の月に多めに入れられますが、こどもNISAで同じことができるかは、現時点でははっきりしません。

もしできなければ毎月5万円になりますが、そのときの差は26万円です。そこで悩んで開設が遅れるほうが損なので、まずは開けることを優先します。


1年遅らせるといくら失うのか

その「遅れるほうが損」を数字にしておきます。

年初一括60万×10年を、スタート年齢だけずらしました(年5%・子が30歳の時点)。

スタート30歳時点0歳スタートとの差
0歳2,102万円—
1歳2,002万円-100万円
3歳1,816万円-286万円
5歳1,647万円-455万円
8歳1,423万円-679万円
18歳874万円-1,229万円

1年遅らせるごとに、だいたい100万円ずつ減ります。

さっきの数字と並べます。

やること効果(年5%・30歳時点)
毎月積立 → 年初一括に変える+46万円
スタートを1年早める+100万円

1年早く始めることは、年初一括にすることの2倍以上効く。

年初一括を勧めておいて何ですが、順番は間違えないほうがいいです。年初一括にするかどうかで悩んで3ヶ月止まっている人と、毎月積立でいいから来月から始めた人なら、後者が勝ちます。


我が家がどうするか

やること

  • こどもNISAは、開設できるようになった時点ですぐ開く
  • 年60万円の枠は、可能な範囲で年初に寄せる。できなければ毎月5万円で構わない
  • 銘柄はオルカン1本。子ども用に別の商品を選ぶ理由が見つからない
  • 18歳で全部使い切る前提にはしない

やらないこと

  • 生活を削ってまで年60万円にこだわる
  • 相場を見てタイミングを計る
  • 子ども名義だからと、リスクを下げた商品にする

3つ目だけ補足します。「子どもの教育資金だから安全に」という発想は分かるんですが、18年という期間はインデックス投資にとってかなり長い部類です。むしろ大人の口座より長い。ここで守りに入るのは、期間の使い方としてもったいない。

もちろん大学入学の直前に暴落が来る可能性はあります。だからこそ「18歳で全部使い切る前提にしない」を最初から入れています。


18歳で全部使わない、という前提

年5%で18歳時点に1,171万円。ここから大学4年間、毎年150万円ずつ取り崩したとします。

残高
18歳(入学時)1,171万円
22歳(卒業時)744万円

600万円入れて、大学4年分の600万円を取り出して、まだ744万円残っています。

しかもこの744万円は、そのまま本人の成年NISAに乗って動き続けます。残りの生涯枠も1,200万円あります。

教育資金として作ったつもりのお金が、そのまま本人の資産形成のスタートダッシュになる。 こどもNISAの本当の価値は、たぶんここにあります。

社会に出た時点で700万円を持っていて、非課税の枠もまだ1,200万円残っている人と、0円・1,800万円の人。枠の総量では後者のほうが多いのに、たぶん前者に追いつけません。

そう考えると、我が家がこの枠でやっているのは「教育費の準備」というより、本人のスタート地点を前にずらす作業に近いです。


正直に書いておくこと

これは予測ではありません。 年5%という前提を置いた場合の皮算用です。年3%かもしれないし、マイナスの期間が5年続くかもしれない。

途中で必ず下がります。 18年もあれば、資産が3割減る局面は普通に来ます。私はコロナのときに経験しました。そのとき売ってしまったら、この記事の表は全部意味を失います。暴落時に何をするかで30年後に3,000万円の差がつくという計算もしたことがあります。

年60万円は、そこそこの金額です。 月5万円を子ども1人に回せる家庭ばかりではありません。子どもが複数いればなおさらです。無理に埋めることが目的化したら本末転倒で、投資は家族の保険であって、生活を削る理由ではないはずです。

払出しには制限があります。 原則として払い出せません。12歳以降、本人のための使途である旨と本人の同意を届け出れば可能ですが、要件に該当しない払出しには課税されます。「いつでも下ろせるお金」ではないので、生活防衛資金とは完全に分けて考える必要があります。

制度はまだ動きます。 2027年1月開始の予定ですが、細部は今後の審議次第です。この記事も、確定情報が出たら追記します。

そして最後にもう一度。

枠は増えません。 こどもNISAは、子ども1人あたり600万円の非課税枠をプレゼントしてくれる制度ではなくて、本人がいずれ使う1,800万円のうち600万円分を、18年早く使わせてくれる制度です。

でも、増えないからこそ、いつ使うかが全部です。

同じ600万円の枠で、1,502万円を守った人と254万円を守った人がいる。やったことの違いは、始めた時期だけでした。


まとめ

  • 「月5万×20年で利益631万」は年4.06%想定なら正しい計算。年5%なら829万、年7%なら1,338万
  • しかもNISAなら税金128万円がかからない。「631万しか」ではなく「631万まるごと」
  • こどもNISAの600万円は、本人の生涯枠1,800万円の内数。枠は増えない
  • ただし枠は簿価で数えるので、早く埋めるほど枠1円あたりの働きが大きくなる
  • 同じ600万円の枠で守れた利益は、0歳スタート1,502万円 vs 18歳スタート254万円で5.9倍の差(年5%・30歳時点)
  • 生涯枠1,800万円を使い切ったとき、50歳時点で9,237万円 vs 4,513万円
  • 10年で埋める vs 18年でゆっくりの差は208万円
  • 年初一括 vs 毎月の差は26万円。小さいが追加コストゼロで取れる
  • 1年遅らせるコストは約100万円。年初一括にする効果の2倍以上
  • 年初一括の正体は「早く始める」を毎年やり直すこと。同じ話をしている

631万円という数字を見て「そんなものか」と積立をやめる人と、「じゃあ入れ方を変えよう」と設定画面を開く人がいます。

20年後に差がつくのは、たぶん利回りではなくてそっちのほうです。


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